制作発表であった日から、あなたは脚本の完成におわれてるらしく、
メシ食いに行こうやって誘っても、つれない返事ばかり。
まぁ、来月には撮影も始まるし、仕方ないのはわかっとるんだけど。
…会いたいよな~。
どうしたら会えるか、真剣に考えてたんやけど。
そっかぁ、また会いに行けばいいんや。
この前みたいに差し入れしに行こうや。
そうと決まれば早速リサーチや。
何が喜ぶんやろ。
俺はあなたのことを考えながら、必死に何がええか、考えとった。
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次の日、俺は考えに考えて、あなたの喜びそうなもん探して、部屋の前に立っとった。
《ピンポーン》
チャイムを押して、ドキドキして待っといたら、
《はい、どちらさま~》
…えっ、男の声?
あなたって彼氏おったの?
予想せえへん出来事にあたふたしてたら、
ドアから濵ちゃんが顔を出す。
持ってきた袋を見せる。
とりあえず家ん中に入ると、
って、なぜか神ちゃんまでおって。
俺の計画台無しやん。
って、言いながら台所で何かしとる。
神ちゃんが部屋の方を指さす。
…なんやの~、せっかく会いに来たのに。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!