第53話

涙の理由 3 ~望‘s side~
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2021/06/10 12:06
しばらくして、あなたの泣き声が小さくなってく。


…ようやく落ち着いたみたいやな。
それから少しして、あなたが顔をあげる。
落ち着いたん?
あなた
うん、ありがとう。

照れくさそうに笑う顔はいつものあなたで



胸につかえてたもんは落ちたんやって思えた。


腹減ってへん?
どうせ、何も食べてへんやろ。
あなた
ちょっと。でも、外は出たくない。

泣きはらして、浮腫んだ目を気にしとるんやろな。

キッチン入ってええ?
俺、何か作るわ。
この前、濵ちゃんや神ちゃんが世話やいてんの、羨ましかったんや。

あなた
でも、たいしたもんないよ。
冷凍庫に鶏肉発見。卵も玉ねぎもあるし


望特製、親子丼作ったるわ。
あなた
できるの?
得意料理やで、任しとき

キッチンで準備をしてたら、あることを思い出した。

そや、流星がキツいこと言ったって落ち込んでたで
連絡してやり、あいつ結構気にしぃやから


あなたがカバンの中からスマホを取り出す。

あなた
うわっ~。
あなたが驚いた顔して、スマホを見ながらキッチンの椅子に座る。

なんしたん?
あなた
これっ、マナーモードにしてたから、気づかなかった。

あなたのスマホの画面にはたくさんの着信履歴とLINEの通知がきとった


みんなそれだけ心配してたんや。返事してやってな。
あなた
うん、わかった。

ご飯が出来る間、部屋で返信をしとるあなた



時々、誰かから電話きとるみたいで、話し声が聞こえる。

~うん、大丈夫。…わかったよ。うん、もう寝るし。

終わったんか、キッチンにやってくる。

連絡したん?
あなた
うん、したよ。
誰かから電話きてたみたいやけど
あなた
うん。シゲちゃんと神ちゃん
寝るとか言っとらんかった?
あなた
うん、今から来るって言うからね。寝るから来なくて大丈夫だよって言ったの。
何で?
あなた
のんちゃんが来てくれたから、それで充分だから。

思わず緩みそうになる頬を見せんようにするのが精一杯で




料理をする手がおぼつかない。

ほら、出来たで
あなた
わ~、美味しそう。

出来上がった親子丼を見て、笑顔を見せるあなた


…心配してるメンバーには悪いけど



今日は一人占めさせてもらおう。


あなたの笑顔を見ながら、そう思ってたんや。

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