私は親の事を
忘れてしまっていた。ずっと
離れて暮らしていた。
前まで住んでいた大家さんに
ずっと助けられていた。
とても優しくて、旦那さんは
前世がわかるという。
汐に見送られてから
その足で猫山通りに向かった。
小林さんは猫山通りに住んでいた。
私の前に熱めのコーヒーが出された。
何がわかるのかわからない
様な質問を何個もされた。
小林さんは目を見張るようなことを
私に教えた。
それは私の真実だった。
でも私はまだそれに気づかない。
小林さんは私の知らない事、
真実を淡々と述べた。
でも信じられなかった。
ニャーと応えて行ってしまった。
ピロンッ ♪
舞夏からの着信だった。
舞夏から何度も着信が来ていた。
声も焦っていたし。
私の心が、すぐに走り出していった。
大学に着くと、すぐに声がした。
人が輪になって集まっていて
何があったのかはわからなかった。
「おい、
お前が心乃をたぶらかしたのか?」
「違うわけ無いだろ!
全部お前のせいだ…!」
そう言って、男子が汐を突き飛ばした。
(もっとやれー!そうだそうだ!)
と周りからもヤジが飛んだ。
汐を突き飛ばしたのは、
先日告白してきた同じ学科の男子だった。
「舞夏はこいつの肩持つのか!?」
「じゃあなんだよ…!
ここから松浦を追い出してやるからな。
俺がお前に負けるわけ無いだろ…!?」
ヤジの後ろにいた
私に気づいた舞夏は
私に近寄り勢い良く話し始めた。
私は舞夏を振り切って
ヤジをかき分けると、
突き飛ばされたひとが見えた。
突き飛ばされた汐の
体を支えるように駆け寄った。
「こ、心乃…!
こいつに騙されるな!」
苦笑しながら
体が勝手に対抗していた。
「…くっ…もういい、
俺が学科やめるよ。」
「…ごめん。」
「あっ…ごめん、松浦。」
そのまま走り去っていった。
散り散りに周りも居なくなっていった。
そう言って、顔をあげると
汐と見つめ合う体勢になった。
汐が焦って目を逸らした。
この想いが消えないように、
でも一瞬の思い出に。
私も目を逸らした。
舞夏が飲み物をくれて、
その場を離れた後、
理由はないのになんとなく、
汐をぎゅっと抱き締めた。
いつの間にか手を握って、
家に帰った。
なぜだろう、そんなに何かが
変わったような気がしない。
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僕が突き飛ばされた後、
いつの間にか手を繋ぎ帰った。
なぜだろう、そんなに何かが
変わったような気がしない。
窓の向こうで、太陽が動いただけだ。
その夜、いつものようには
行かなかった。
今日のあのあと、心も体も
静かに暖かに締め付けられた。
だからか。
光と影が逆転しても、
気にならなかったのに、
心乃の事を気にする日が来るなんて
思わなかったから、
カーテンは閉めなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。