第2話

真実ト、恋心。
217
2018/05/14 13:34
私は親の事を
忘れてしまっていた。ずっと
離れて暮らしていた。


前まで住んでいた大家さんに
ずっと助けられていた。
とても優しくて、旦那さんは
前世がわかるという。


汐に見送られてから
その足で猫山通りに向かった。

小林さんは猫山通りに住んでいた。


春屋 心乃
春屋 心乃
あったことないからわかんないよー…
小林
どうかしたかな…?
春屋 心乃
春屋 心乃
えっと、小林さんって人
探してて。
小林
わしゃ小林だ。
無論、君が探しているのも
このわしじゃ。
春屋 心乃
春屋 心乃
あっ、そうなんですか!
こんにちは、私…
小林
心乃ちゃんだね。
んまぁ、入っとくれ。
春屋 心乃
春屋 心乃
え、あそっか。
私のことは知ってるのか。
…失礼しまーす。
小林
それで今日は
どうしたんだい。
春屋 心乃
春屋 心乃
あっ、えーっと。
自分のことを知ろうと思って。
小林
んいやいや、ははっ。
まだ早いと思うぞ。
まあ座れ座れ。
春屋 心乃
春屋 心乃
えっ、でも私
大学生になって
大人になったんです…!
小林
んー、そうか。
小林
じゃあ、ひとつだけ。
君はまだ真実には気づいていない、
気づけないんだ。
春屋 心乃
春屋 心乃
えっと、それは…
どういう?
小林
真実が曖昧だから
とにかく聞きに行こうと
ここに来たんだろ?
春屋 心乃
春屋 心乃
そうですね…
なんでわかっ…
小林
なんでわかるか。
わしゃ、何もかもが見える。
頼ってくる人のすべてが。
春屋 心乃
春屋 心乃
そうですか、私にはまだ
頼ってくれる人の真実が
わかりません。
小林
おっ、わかってくれたか。
私の前に熱めのコーヒーが出された。
春屋 心乃
春屋 心乃
いただきます。
…あちっ。
小林
猫舌…なのかな?
春屋 心乃
春屋 心乃
そうですね、猫舌だと思います。
小林
君のことを教えるわしにも
君の親から託された信頼という
ものがある。だから、
教えるためにも今までのことで
聞くことを教えてくれ。
春屋 心乃
春屋 心乃
わかりました。どうぞ。
小林
(咳払い)
君は今まで自由だと
言われたことはあるか?
何かにこだわりがあるか?
好きな人は…?……
何がわかるのかわからない
様な質問を何個もされた。
小林
そうか、ありがとう。
今日で確信がもう一度持てたよ。
君は…
小林さんは目を見張るようなことを
私に教えた。
それは私の真実だった。
でも私はまだそれに気づかない。
春屋 心乃
春屋 心乃
は?…何言ってるか
わからないんですが。
小林
君に何かが起こると、
心臓が過度に反応するだろう。
困ったときにでも、私に
なんでも相談するといい。
春屋 心乃
春屋 心乃
はぁ…
いつかわかりますか?
小林さんの言ったことが。
小林
あぁ、もちろんだ。
いつでも電話してくれ。
真実を知っているのはわししかいない。
春屋 心乃
春屋 心乃
ありがとうございます…
では。
小林
あっ、あと…!
この事は誰にも言うな、絶対に。
春屋 心乃
春屋 心乃
わかりました…
小林さんは私の知らない事、
真実を淡々と述べた。

でも信じられなかった。
春屋 心乃
春屋 心乃
ただいまー。
あれ、"ねこ"しかいない?
"ねこ"、汐は?
ニャーと応えて行ってしまった。

ピロンッ ♪
舞夏からの着信だった。
春屋 心乃
春屋 心乃
もしもしー、舞夏?
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
あっ、やっと出た!
大変なの!汐が…汐がこの前の…
春屋 心乃
春屋 心乃
落ち着いて舞夏、
今どこ?
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
大学の裏…!
春屋 心乃
春屋 心乃
わかった今行くっ…!
舞夏から何度も着信が来ていた。
声も焦っていたし。
私の心が、すぐに走り出していった。



大学に着くと、すぐに声がした。
人が輪になって集まっていて
何があったのかはわからなかった。

「おい、
お前が心乃をたぶらかしたのか?」
松浦 汐
松浦 汐
え?ち、違うよ…
「違うわけ無いだろ!
全部お前のせいだ…!」

そう言って、男子が汐を突き飛ばした。

(もっとやれー!そうだそうだ!)
と周りからもヤジが飛んだ。
松浦 汐
松浦 汐
いっ…痛い…
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
や、やめなよ!遊も!
汐を突き飛ばしたのは、
先日告白してきた同じ学科の男子だった。


「舞夏はこいつの肩持つのか!?」
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
そういうことじゃなくて…
「じゃあなんだよ…!
ここから松浦を追い出してやるからな。
俺がお前に負けるわけ無いだろ…!?」
松浦 汐
松浦 汐
う、うん…
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
心乃!
どうしよ心乃、学科が荒れちゃう…
ヤジの後ろにいた
私に気づいた舞夏は
私に近寄り勢い良く話し始めた。
春屋 心乃
春屋 心乃
落ち着いて、舞夏。
私のせいだし、まってて。
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
えっ、でも心乃…!
私は舞夏を振り切って
ヤジをかき分けると、
突き飛ばされたひとが見えた。
春屋 心乃
春屋 心乃
汐…!?
汐、大丈夫?
突き飛ばされた汐の
体を支えるように駆け寄った。


「こ、心乃…!
こいつに騙されるな!」
春屋 心乃
春屋 心乃
は?騙されちゃいけないのは
あんたでしょ。
表面で良い顔して
これがあんたのやり方?
苦笑しながら
体が勝手に対抗していた。

「…くっ…もういい、
俺が学科やめるよ。」
春屋 心乃
春屋 心乃
辞めるのは勝手だけど
言うことないわけ?
「…ごめん。」
春屋 心乃
春屋 心乃
誰に言ってんの。
「あっ…ごめん、松浦。」

そのまま走り去っていった。
散り散りに周りも居なくなっていった。
松浦 汐
松浦 汐
心乃…
春屋 心乃
春屋 心乃
あっ、ご、ごめんなんか
空気悪くしちゃったね…あはは。
松浦 汐
松浦 汐
僕のせいだから、
心乃は何も悪くないだろ…
春屋 心乃
春屋 心乃
大丈夫、?
汐…
そう言って、顔をあげると
汐と見つめ合う体勢になった。
春屋 心乃
春屋 心乃
……
松浦 汐
松浦 汐
……あっ、ありがとな心乃。
汐が焦って目を逸らした。

この想いが消えないように、
でも一瞬の思い出に。
私も目を逸らした。
春屋 心乃
春屋 心乃
うん、帰ろっ汐。
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
はいっ、これあげる。
んじゃ!
松浦 汐
松浦 汐
ありがと、舞夏も一緒に…
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
私は用事あるからさー、
あとは頼んだぞ汐!
ふふふっばいばーい!
松浦 汐
松浦 汐
えっ、あっ…うん。
春屋 心乃
春屋 心乃
ふふふっ。
舞夏が飲み物をくれて、
その場を離れた後、
理由はないのになんとなく、
汐をぎゅっと抱き締めた。


いつの間にか手を握って、
家に帰った。
なぜだろう、そんなに何かが
変わったような気がしない。


______________________________________________

僕が突き飛ばされた後、
いつの間にか手を繋ぎ帰った。

なぜだろう、そんなに何かが
変わったような気がしない。

窓の向こうで、太陽が動いただけだ。

その夜、いつものようには
行かなかった。

今日のあのあと、心も体も
静かに暖かに締め付けられた。

だからか。
光と影が逆転しても、
気にならなかったのに、
心乃の事を気にする日が来るなんて
思わなかったから、
カーテンは閉めなかった。

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