笑って返されたけど、
行かなきゃいけないと思った。
あの日の朝、
なんでもない普通のあの日。
でも、少し違ったようなあの日。
僕は君にキスをしていた。
そのまま座って
病院に行くための準備をした。
何も言えなかった。
何も返せなかった。
……
横に座って、僕の事を
見つめる気配がする。
'' どうしたの? "
と言い終わる前に、
君にぼくを奪われた。
普通ならここで…
って振り返る心乃の手を掴んで
後ろから抱き締めたりするんだろうな。
でもぼくたちは違う。
好きなんじゃない、
すきなだけだから。
だから…
と、なんとなく手を繋がれて
病院に行った。
歩き方も
前よりもっと不安定だし、
植木鉢事件もあったのに、
何かない訳はないのではないか。
もう一人の自分を
受け入れきれていないような、
認めたくないからというような
心乃の表情が、瞼に残った。
それから僕は、
舞夏に連絡した。
君の事が気になっていた。
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私は、汐にキスしても
汐をぎゅって抱き締めても
もう一人の、本当の自分を
認められない。
だからもう一度、
小林さんに連絡した。
"普通に生きろ"
私には、生きる普通が
わからない。
君と一緒に生活する事だろうか。
それとも君に…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。