第4話

憂愁ニ、日々。
87
2018/05/06 13:40
松浦 汐
松浦 汐
なぁ、病院行かない?
春屋 心乃
春屋 心乃
えっ、何突然。
こわーいうふふっ!
笑って返されたけど、
行かなきゃいけないと思った。

松浦 汐
松浦 汐
えっと…だから、
最近少食だとか歩く時辛そうとか
ま、舞夏に聞いてさ。
春屋 心乃
春屋 心乃
何言ってんの、あはは!
元から変だよ?私。
松浦 汐
松浦 汐
えーっと、そうかもしれないけど
とにかく連れてけって。
春屋 心乃
春屋 心乃
ふーん、あっそ。
舞夏のためなら
仕方無いかー。
松浦 汐
松浦 汐
舞夏のためっていうか
自分のため…
春屋 心乃
春屋 心乃
じゃあ、聞くこと聞いてから
行くから。
松浦 汐
松浦 汐
えっ、なに?
春屋 心乃
春屋 心乃
ふぅーっ。
あの日の朝、なんで私に
キスしたの?
松浦 汐
松浦 汐
えっ……
あの日の朝、
なんでもない普通のあの日。

でも、少し違ったようなあの日。

僕は君にキスをしていた。
松浦 汐
松浦 汐
……
そのまま座って
病院に行くための準備をした。

何も言えなかった。
何も返せなかった。


……
横に座って、僕の事を
見つめる気配がする。
松浦 汐
松浦 汐
…どうしたの?
'' どうしたの? "
と言い終わる前に、

君にぼくを奪われた。
春屋 心乃
春屋 心乃
….仕返し~ふふっ。
春屋 心乃
春屋 心乃
さぁ、準備しよーっと。
松浦 汐
松浦 汐
……
普通ならここで…
松浦 汐
松浦 汐
ちょっと!まって…
って振り返る心乃の手を掴んで
春屋 心乃
春屋 心乃
えっ…
後ろから抱き締めたりするんだろうな。

でもぼくたちは違う。
好きなんじゃない、
すきなだけだから。


だから…
春屋 心乃
春屋 心乃
汐ー、遅い!
せっかく私が行くのにー。
松浦 汐
松浦 汐
ごめん…行こう。
と、なんとなく手を繋がれて
病院に行った。




医者
…確かに話だけ聞くと
不安定だったり、風邪や
病気か何かかもと思いましたが…
何もありませんね。
健康な状態です、疲れているとは
思いますが。
松浦 汐
松浦 汐
そうですか…
春屋 心乃
春屋 心乃
でしょうね!ふふ。
松浦 汐
松浦 汐
ありがとうございました。
歩き方も
前よりもっと不安定だし、
植木鉢事件もあったのに、
何かない訳はないのではないか。
松浦 汐
松浦 汐
心乃!
本当に何もないんだよな、
隠してる事とか。
春屋 心乃
春屋 心乃
……えっ?
何もないよーふふふっ!
松浦 汐
松浦 汐
そっか。
もう一人の自分を
受け入れきれていないような、
認めたくないからというような
心乃の表情が、瞼に残った。
それから僕は、
舞夏に連絡した。
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
えー、そっかぁ…
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
何か隠してるのかな、
聞いてない?
松浦 汐
松浦 汐
僕もそう思って
聞いてみたんだけど、
何もないって。
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
そう…じゃあ
本当に思い違いなのかな。
城ノ内 舞夏
城ノ内 舞夏
でも心配だし、
なんかあったらまた言って!
松浦 汐
松浦 汐
わかった、ありがとな。
君の事が気になっていた。


_______________________
私は、汐にキスしても
汐をぎゅって抱き締めても

もう一人の、本当の自分を
認められない。


だからもう一度、
小林さんに連絡した。
春屋 心乃
春屋 心乃
もしもし、小林さん?
小林
はい、おぅ、
心乃ちゃんか。
何かあったかな。
春屋 心乃
春屋 心乃
最近みんなに、
歩く時フラついてるとか
少食になって痩せたとか
言われるようになって…
春屋 心乃
春屋 心乃
それって何か、
"自分"に関係するんですか?
小林
そうか…
もちろん関係している。
それも結構深くにだ。
春屋 心乃
春屋 心乃
えっ…
私、どうなりますか。
どうなっちゃうんですか…!
小林
落ち着いとくれ。
君はまだ大丈夫な方だ。
だが、そんなに時間は
ないと思ってくれ。
春屋 心乃
春屋 心乃
っ……
わかりました。
ありがとうございます。
小林
君は、最後が来るまで
普通に生きろ。
色々、辛いことがあるだろうが
その時はまた電話してくれ。
春屋 心乃
春屋 心乃
…はい。
失礼します。
"普通に生きろ"

私には、生きる普通が
わからない。

君と一緒に生活する事だろうか。

それとも君に…

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