「~♪..きしむベッドの上で優しさを持ちより~、きつく躰抱きしめあえば~、それからまた二人は目を閉じるよ、悲しい歌に愛がしらけてしまわぬように~...」
「んはぁ~~!!!!やっぱきもちぃい~~♡」
今日も今日とて人気のない静かな屋上で尾崎豊さんの『I love you』を歌う
高校生が歌うには歌詞がほんのちょっと増せてる気がするけど、しょうがない、
だってこの曲は私の十八番なんだから(笑)。
親の影響で尾崎豊さんの曲を聞くようになってから、かれこれ5年は経つけど、気づいたときにはもうこの曲しか歌ってないな(笑)
なんならこの屋上でこの歌を歌うのが私の高校生活の日課になってきている
「やっぱ歌うの最高♪」
誰もいないからこそ熱唱できる
なんて幸せな時間なんだろう..♡
そう思っていたのに....
『めっちゃ歌うまいっすね!』
「ぅわぁっ!!」
突然話しかけられたから思わず変な声が出ちゃった、
はずかしぃ.../////
『え、尾崎豊さんの『I love you』ですよね』
「あ、あ、あ、えっと...す、すみませんでしたぁ~!!」
『まって、』
「うわっ」
突然腕を捕まれる
『また聞かせてくれる?』
「え?...」
『あなたの歌声、気に入っちゃった♪』
「....ッッッ!!!////」
『ふはっ、顔真っ赤(笑)』
「~~!!///」
もういや!!!///
歌い終わったと思ったら突然話しかけられて、ってか、歌ってるとこを見られたってことでしょ!!?...
うわぁ、もうそれだけで死にそう...↓↓↓
しかもあれよ、よりによって、見られていたのが校内ファンクラブがある超絶人気者の目黒蓮くん。
この人の名前を知らない人はいないだろう、って言うくらい有名で、先輩、後輩、そして先生と様々な人を虜にするくそイケメン✨✨
そんな人が私なんかに話しかけるなんて、...
私、もしかして、明日死にますか?
それになに今の。
腕つかんで「また聞かせてくれる?」って!!!
罪でしょ!罪!!!
これ、私以外の女の子にやったらきっと目黒くん、すごいことになるよ!!?
いろんな意味で。
って、なんか流れで逃げてきちゃったけど、いいのかな?(笑)
ま、いっか、
教室までこればもう平気だろう、さ、課題でもやりますか!!
「きゃーーーー!!!!♡♡♡」
「え、やばいやばい!!こっちくる!!」
「まってまって、うちのクラスの方くるじゃん!!!」
あ~、きました、いつもの黄色い歓声(笑)
また目黒くんファンの子達がキャーキャーしてるのかな?
楽しそうで何よりです。
ま、私には関係ないんだけど(笑)
......あれ?ち~っと待てよ?
目黒くんて、クラス、離れてるよね?確か
(クラスの女子情報
え、なんで?
まぁ、あれか、男友達に会いに来たんだな、うん、それだ
てかなんで私、自分のとこにくる、なんて勘違いしてんだろ..//
なんかこれって完全にキモいやつみたいじゃん、私、
別に好きでもなんでもないのに(笑)
「おーい、中川~、呼び出しだぞー!!」
「え!!」
私、何かした??
「はーい...って、えぇ!!?」
『はは(笑)、ごめんね、いきなり』
「めめめめ、目黒くん!!!?」
ちょっと待って、パニックなんですけど!!!
てかみんなからの視線もヤバイし!!!
ちょっと待って、ほんとに待って、
「あ、あ、あの、な、なんでしょう...か?」
『めっちゃ緊張してんじゃん(笑)、あ、はい、これ、忘れ物』
「...あ、」
それは、私が大事にしている小さなポーチ
中にはもう死んじゃったけど、大好きな愛犬のぽーちゃんの写真が入ってるんだ
「あ、あり、がとぅ...//」
『うん』
「あれ、でも、なんで私のクラスがここってわかったの?」
『ん~、なんとなく?(笑)』
おぉ、おそろし!!
「そっか(笑)、でも、ありがとうございました。これ、私の大切なポーチなんです。忘れてったことに気づいてなかったら、きっと悲しんじゃうから...」
『...?』
「あ、ごめんなさい、こっちの話です。ありがとうございました』
『ん、じゃ、またね』
「はい、」
このあと、クラスの女子に囲まれて事情聴取やらをされたのは言うまでもない
でも、これで今日1つ気がついた。
目黒くんて、噂通り、いい人だね
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。