第134話
《本物》
「あそこの病院には出る」
「学校のトイレには幽霊がいる」
「隣の空き家には何かがいる」
誰しも身の回りで1度は
そんな噂を聞いたことが
あるのではないだろうか?
ほとんどの噂は
人間の目の錯覚、
勘違いから生み出されることが多い。
他人の口から語られる
自らに危険のない無害な噂。
退屈な毎日に
ちょっとした刺激を与えてくれるスパイス。
けれど、
その噂達の中にまさか《本物》が
混ざっているとは誰も思わない。
『そんなものは存在しない』
皆、心の中で
『自分は非日常とは無縁だ』
と安心しきっている。
《本物》は
《誰》のすぐ隣にも
確かに存在しているというのに。
学校の帰り道。
いつも行くコンビニ。
もしかしたら今寝ているベッドの下にも。
《本物》は
静かに待っている。
━━自分に気づく人間を。