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2021/10/11

第137話

理想の妹
━━コツコツコツ。

小さな足音が倒れたミカの足もとまで
やって来た。

恐怖で体が思うように動かない。

━━コツコツコツコツ。

足音は止まらず
ミカの頭の近くを通り過ぎた。

目をかたく閉じ
足音の主を見ぬようにしていたミカは
音が通り過ぎたのを聞き
顔をあげ薄く目を開く。

ぼんやりとした視界に
白い塊が見える。
少女の幽霊は屈んでいるようだ。

『まだ、いる・・・!?』

消えていてくれれば
どれ程良かっただろうか。

例えば
テレビや映画ではこんな時
耐えられず
登場人物は気を失うことが多い。

今ここで気を失えば
安全かどうかはわからないが
幽霊を見ることはないのに。

気を失うこともなく
逆に意識がハッキリしているのが
嫌になる。

『どうして・・・っ!
どうして、
私だけこんな目に・・・っ!?
アキト、なんで
私を置いていったの?』

友達も恋人もみんな
ミカを見捨てて逃げてしまった。

《友達》

《恋人》

そんなモノは関係ないのか。

人間は本当に恐ろしい出来事に直面すると
自分のことだけしか考えないのか。

『アキト・・・。
私のこと1人にしないって、
守ってくれるって言ってたのに・・・!』

アキトが告白してくれた時のことを思い出し
ミカは涙を流す。

裏切られた。

信じてたのに。
ミカ
ミカ
うっ・・・!
うぅ~・・・っ!
怖さと悔しさと悲しさ 
色んな感情の混じった涙が公園の石畳を濡らした。
???
???
あの・・・。
お姉さん、大丈夫ですか?
ミカ
ミカ
・・・え?
少女の幽霊は心配しているような顔で
両手で持った見覚えのあるスマホをミカに
差し出している。

倒れた時にコートの
ポケットから飛び出したのだろう。

スマホを拾ってくれた親切な幽霊に
ミカは困惑しながらも
「あ、ありがとう」と礼を言った。





◆◇◆◇◆◇
━━少女の正体は幽霊ではなかった。

体が透き通っているわけでも
宙に浮かんでいるわけでもない。

人間の女の子だった。

ミカと少女は公園のベンチに
並んで座っている。

聞けば《あなた》と名乗る少女は
この近くで暮らしているのだという。

いつもは兄達と
この公園に遊びにくるのだが
今日は2人とも来れなかったので
1人で来たとのことだった。
ミカ
ミカ
1人でって、
あなたちゃん
怖くないの?
あなた

はいですっ!
この公園、
あなたのお気に入りですっ!
ぜんぜん怖くないですよっ!

背がミカの腰ぐらいまでしかない
小さな少女は真っ白な長袖のワンピースと
赤い革靴を身につけていて
まるでお人形さんみたいに可愛い。

鈴を転がすような声に
コロコロ変わる表情豊かな愛らしい顔。

こんなに可愛い女の子は
今まで見たことがない。

それに《名前》。

《あなた》━━。

ミカの《理想の妹》と同じ名前。

目の前の少女に出会ったのは
《運命》に違いないとミカは思う。

━━私の《妹》。
あなた

今日は真人様は
お出かけで、
陀艮様はねむいねむいですから
あなたは
1人だったですよ・・・。
でも、1人はつまんないです。
さみしいです・・・

あなたの言う
《真人様》と《陀艮様》というのが
彼女の兄らしい。

本当の兄達ではないとも言っていたから
彼女の家には複雑な事情があるのだろう。

しかし、
どんな理由があるとしても
幼い少女が1人夜の公園にいるのは
危ない。
ミカ
ミカ
だったら、
私が一緒に
遊んであげようか?
しょんぼりしていたあなたは
その言葉に途端に笑顔になる。

スマホには
友達からもアキトからも
連絡はきていなかった。

ミカがいないことに
気づいていないはずがない。

『私、
本当に捨てられたんだ・・・。
連絡もないし、戻ってもこないし』
あなた

嬉しいですっ!
ミカさん優しいですっ!
あなたは
とっても嬉しいですよっ!

無邪気にはしゃぐあなた。

『あぁ、可愛い。
この子が本当に私の妹だったなら・・・』
ミカ
ミカ
ねぇ、あなたちゃん
あなた

はい!

ミカ
ミカ
私のこと
『お姉ちゃん』って呼んでよ