ドクドクと鼓動が聞こえる。
チャイムが鳴ると下條先生は腕時計を確認して、慌ててバインダーに記入をする。
「じゃ、これで学活終わりな。急いで帰る支度しとけよ」
そういうと号令もかけず急ぎ足で教室から飛び出して行った。
雨の音が聞こえる。
空は暗く、どんよりとしていて夕日などに出番を与える隙もなかった。
ドクドクと鼓動が速くなっている気がする…
雨の音が私を焦らす。
目頭が熱い。
時計の針の音までが鮮明に聞こえる。
呼吸が速くなる、
周りの音が聞こえない…
ガタンッ、
気がついた時には立ち上がっていて、椅子が勢いよく後ろへ倒れた。
呼吸がうまくできない。目頭が熱い、熱い、息が詰まりそうで、まるで海の底にいるみたい。
ざわざわとした教室でチラチラと私への視線が痛い。
「ちょっ、夏乃大丈夫?」
百香が椅子を直しついでに顔を覗き込んでくる。
咄嗟に顔を逸らしたけれど、堪えきれなかった…
「蒼くんっ!!、」
泣いたまま、呼吸がうまくできないまま私は声を張り上げた。
ヒューヒューと喉が鳴る。
涙が止まってくれない。
蒼君はクラスメイトと話したいたけれど、私の声にため息をついてこちらを見つめた。
自分が呼吸を整えていると蒼君は待たずに「何?」とだけ言った。
眉間にシワがよるのがわかる。
「ちょ、蒼もその態度やめなよ…よくないってそういうの」
百香は私たちの間に立ち蒼くんをなだめる。
「あーはいはい、ごめんって」
「だからっ、そういう態度のこと言ってんの」
百香の額に汗が伝う。
「は?俺元からこういう人だから。嫌だったら関わらないでくれる?」
「っ、屁理屈!!そんなの知らないっうの。なんだっていいから夏乃に謝れよ」
うるさい、
うるさい、
うるさい、
「いい加減にしてっ!!!!」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。