「この文章において筆者が伝えたかったことは、物事は間違った情報が事実として捉えられている現状。そのことを踏まえ、筆者が伝えたかったことをノートにまとめましょう。今までの授業を振り返ってもいいでしょう。チャイム後に提出です」
そこまで言うと先生はクイっと眼鏡を上げ、教卓に乱暴に教科書を置いた。そのまま椅子に腰掛けると手元に置いてあった小説を開いて読書を始めてしまった。
「え、やば」
ひそひそと教室中でざわめく声が耳にチラチラと入る。
「なぁ、先生見てないしなんか話そうぜ」
白石くんが蒼君にそう話しかけると、蒼君はだるそうに首を振った。
「無理、俺寝るわ」
白石くんは、えぇと言った様子で残念そうに私の後ろに席で足をバタつかせた。
「いいから先にノートまとめなって」
七実ちゃんの冷静な助言も白石くんには無意味だったらしく白石くんは都合が良さそうに「そういえばさ」と七実ちゃんに話をふっかけた。
「あいつのタイプ聞き出しといてくれない?お前仲良いじゃん?頼むぜ…」
「白石くんちょっとうるさい。静かにしてくれない?」
若干の苛立ちを放ち、私は低めの声で言う。
ただでさえ蒼君のせいであまり気分が良くないと言うのに、白石くんが後ろの席で足をばたつかせていると余計に気分が悪くなる。
「夏乃さぁ、さっきに授業の時からなんか変だぜ?元気出していこうぜ!な」
ガンッ
元気出す?なんのために?
私学校が楽しくないの、今だって帰りたいくらいつまらないの。
白石くんの言葉に無性に腹が立って、思わず机を拳で叩いた。
「え、ちょ夏乃ちゃ…」
七実ちゃんが固まると同時、白石くんも先程のテンションを乱しビクリと固まる。隣の席で伏せていた蒼君は視線をあげ、チラリと私の方を横目で見た。
「うるさい、黙って?」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。