無事実験は終了し、終わった頃には時間ギリギリだった。
「蒼君が水槽に水を入れておいてくれてたらもっと早く終わったのにな…」
わざと聞こえるように言ってみたりする。
「まぁ今回は私たちが先に気付かなかったのも悪いからしょうがない」
七実ちゃんは優しく蒼君に言った。
「白石どうしたの?」
七実ちゃんが不思議そうに白石君の方を見た。
白石君は班の会話が聞こえていないようで、他の班の人のことをじっと見つめていた。
「あんたまさか美咲の事好きなの?」
七実ちゃんが驚いたかのように言うと白石君はハッと息を呑んで必死に否定した。
「ちげーよ馬鹿、勝手に決めつけんな」
「でもガン見だったよね?」
早速蒼君は七実ちゃんと一緒に白石君を茶化し始めた。
「好きなら告白すれば?じゃないと他の人に取られちゃうかもよ?」
七実ちゃんは落ち着き払った様子でつぶやく。
そして美咲ちゃんが楽しそうに笑って会話しているのを目を細めて見つめた。
「いやだからそうじゃなくて」
白石君は必死に否定するがこの2人には無駄だろう。それはもちろん私もだけど…
可哀想に、美咲ちゃんは好きな人いるのになぁ。
そう思うのは七実ちゃんも同じだろう。
七実ちゃんと美咲ちゃんは仲がよく、いつでも一緒に行動している。
七実ちゃんは1番美咲ちゃんのことを理解しているはずなのにこんな会話をしていて胸が痛くないのだろうか…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!