朝、カーテンの隙間から光がこぼれていた。
冬の光より少しやわらかくて、少しだけ明るい。
「今日から新しいクラスか……」
制服のボタンを留めながら、胸の奥がそわそわしているのを感じた。
不安なのか、楽しみなのか、自分でもよく分からない。
家を出ると、空は驚くほど青かった。
道端の桜は満開に近くて、風が吹くたびに花びらがふわっと舞う。
学校の門をくぐると、いつもより声が多かった。
「何組?」「同じクラスだったらいいな!」
そんな声があちこちから聞こえる。
昇降口の前には、クラス分けの紙。
人だかりの中で背伸びして、自分の名前を探す。
指でなぞるように見ていくと――
「あ、あった。三組」
少しほっとしたのと同時に、
知っている名前を探してしまう。
「え、マジ? 同じクラスじゃん」
横から声がして振り向くと、
去年の隣の席だった友達が笑っていた。
「よかったー、知ってる人いた」
二人で笑う。
さっきまでの緊張が、少しほどけた。
教室に入ると、まだ知らない顔がたくさんある。
でもどこか、みんな同じ顔をしている。
少し緊張していて、
でも少し楽しそうで。
窓の外では桜の花びらが光の中を漂っていた。
ホームルームで先生が言う。
「今年から勉強、ちょっと難しくなるぞ」
教室から小さな「えー」が上がる。
でも誰かが笑って、また空気が軽くなる。
新しい教科書を机の上に積む。
ページをめくると、まだ誰も書き込んでいない真っ白な紙。
まるで今年の一年みたいだと思った。
隣の席の人が小さく声をかけてきた。
「ねえ、数学得意?」
「いや、むしろ苦手」
「よかった。俺も」
二人で笑った。
窓から入る春の風が、ノートのページをめくる。
教室のどこかで、また新しい会話が始まる。
クラス替え。
新しい学年。
ちょっと難しくなる勉強。
まだ知らない友達。
でも、外はこんなに晴れている。
きっとこの一年も、
いろんなことが起こるんだろう。
黒板の上の時計が進む。
春は、始まりの季節だ。
そして今日、僕たちの新しい一年も静かに始まった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。