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第5話

晴れた春
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2026/03/10 07:00 更新


朝、カーテンの隙間から光がこぼれていた。
冬の光より少しやわらかくて、少しだけ明るい。

「今日から新しいクラスか……」

制服のボタンを留めながら、胸の奥がそわそわしているのを感じた。
不安なのか、楽しみなのか、自分でもよく分からない。

家を出ると、空は驚くほど青かった。
道端の桜は満開に近くて、風が吹くたびに花びらがふわっと舞う。

学校の門をくぐると、いつもより声が多かった。

「何組?」「同じクラスだったらいいな!」
そんな声があちこちから聞こえる。

昇降口の前には、クラス分けの紙。

人だかりの中で背伸びして、自分の名前を探す。
指でなぞるように見ていくと――

「あ、あった。三組」

少しほっとしたのと同時に、
知っている名前を探してしまう。

「え、マジ? 同じクラスじゃん」

横から声がして振り向くと、
去年の隣の席だった友達が笑っていた。

「よかったー、知ってる人いた」

二人で笑う。
さっきまでの緊張が、少しほどけた。

教室に入ると、まだ知らない顔がたくさんある。
でもどこか、みんな同じ顔をしている。

少し緊張していて、
でも少し楽しそうで。

窓の外では桜の花びらが光の中を漂っていた。

ホームルームで先生が言う。

「今年から勉強、ちょっと難しくなるぞ」

教室から小さな「えー」が上がる。
でも誰かが笑って、また空気が軽くなる。

新しい教科書を机の上に積む。
ページをめくると、まだ誰も書き込んでいない真っ白な紙。

まるで今年の一年みたいだと思った。

隣の席の人が小さく声をかけてきた。

「ねえ、数学得意?」

「いや、むしろ苦手」

「よかった。俺も」

二人で笑った。

窓から入る春の風が、ノートのページをめくる。
教室のどこかで、また新しい会話が始まる。

クラス替え。
新しい学年。
ちょっと難しくなる勉強。
まだ知らない友達。

でも、外はこんなに晴れている。

きっとこの一年も、
いろんなことが起こるんだろう。

黒板の上の時計が進む。

春は、始まりの季節だ。
そして今日、僕たちの新しい一年も静かに始まった。

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