あの日から、私の奇妙な2週間が始まった。
どうやら、初めの1週間はフレッドの担当らしく、告白された次の日から、フレッドは今まで以上に私のそばに寄ってきた。
ウィーズリーの双子が別々に行動してる!フレッドの奴がグリフィンドールのあなたと一緒にいるぞ!と物珍しいその光景は、瞬く間にホグワーツ全体の噂になった。
すぐに広まったそんな噂に、何処となく居心地の悪さを感じていると、ある時フレッドは私の隣で朝食を食べながら口を開いた。
私の事をじっと見つめニヤリと悪戯に笑うその姿に、一瞬心臓がドキリと跳ねる。フレッドはどちらかと言うと口が達者だ。多少キザな台詞も口にするし、その気にさせるのが上手い方だと思う。
実際、私もここ数日フレッドのこんな言動に何度か顔を熱くした。女性慣れしてる。というのはフレッドみたいな人の事を言うのだろう。
そしてフレッドは、想像していた以上に悪戯好きだ。
きっと、止めなければいつだって誰かに悪戯を仕掛けに行こうとするだろう。
そして、悪戯の事を考えている彼は、多少子供っぽさもありながら真剣な表情を浮かべる時もあった。なにか思いつけば、「あなた!いい案があるんだ」と私にも悪戯の計画を話してきた。
私は、初めこそ呆れていたが、楽しげに悪戯の話をするフレッドの隣に座り、その話を聞いている時間がいつの間にか少し好きになっていた。「読書も楽しいだろうけど、俺の方がもっと面白い話ができる」というセリフはこの数日間で何度も聞いた気がする。
でもその言葉通り、フレッドの面白い話は尽きることがなかったし、彼といると沈黙する時間は少なかった。
私の瞳を見つめ、ニコッと微笑むフレッドから私は思わず視線を逸らした。そして、少し煩くなった心臓を落ち着かせるように、飲み物を口へと含んだ。
今まで、こんなふうに微笑まれても、呆れるだけでなんとも思っていなかったのに、相手を知るだけで私の心は意図も簡単に弾むようになっていた。
単純すぎる自分の心に対し、フレッドに気づかれないほどの小さなため息を漏らす。
フレッドは、さも当たり前かのような口振りでそう言うと、私の顔を覗き込み少し子供っぽく首を傾げた。
2人のことを知るための2週間だ。特に予定もなかった私は、フレッドからの誘いにすぐに頷いた。
すると彼は、何処か嬉しそうに笑った後「絶対に楽しませる」と私の頬を少しだけ優しく撫でた。
そして、気が付けばもう約束の週末。
少しだけ早く玄関前に着いた私は、フレッドの事を待ちながら、空から降ってくる雪を静かに眺めていた。
フレッドの少し息の切れた声に振り返ると、当たり前だがいつもの制服姿とは違う、私服姿の彼が立っていた。
制服でも目に見えて分かるほどのスタイルの良さが際立っている私服と同級生か疑うかっこよさと少しの色気。
髪型も心做しか、いつも以上に整っている気がする。
いつも若干の子供っぽさを持っていた彼の変貌っぷりに、私は思わず言葉を無くし瞬きを数度繰り返した。
完全に無意識のうちに口から出た私の言葉に、フレッドは一瞬目を見開き、そのまま少し目線を逸らした。
そうだった。フレッドは、仮にも私に好意を抱いてくれているのだ。無意識だったとはいえ、今の褒め言葉は軽率だったかもしれない。
何処と無く、自分が発した言葉に恥ずかしさを覚え、「えっと、今のは…」と私もフレッドと同様に、彼から視線を逸らした。
私のボソッとした言葉を聞いたフレッドは、「ありがとな、あなた」と言ってから、まるでさっきの動揺が無かったかのように、私の頭を優しく撫で、そのまま私の顔を自分に向かせるようにして頬を撫でた。
彼のその行動に、自分の耳が徐々に熱を持つ。
心臓は瞬く間に煩さを増し、喉元で息が止まった。
私の言葉に少し動揺していた彼はどこに行ったの?と聞きたくなるほど、目の前に立つフレッドはただ悪戯に微笑んでいた。
こんな彼とデートなんて、大丈夫なんだろうか…と私自身の心に不安を抱きながらも、フレッドに連れられるまま、私達はホグズミードへと向かった。
フレッドは積極的に色んなお店に連れて行ってくれた。
ハニーデュークスに行けば、おすすめのお菓子を教えてくれたし、ゾンコの悪戯専門店に行けば、それはそれは楽しそうに色んな商品の事を紹介してくれた。
普段、ホグズミードに行っても少しの買い物をして、ベンチに座り読書をしていた私にとっては、それが凄く新鮮で自然と笑ってしまう程に楽しかった。
お店を出ると、フレッドは張り切った様にそう言った。
しかし、楽しい時間はあっという間で…時計はもうすぐ学校に戻らなければいけない時刻を指していた。
林の方へと足を向けていたフレッドの腕を掴み、私は「待って」と彼の事を引き止める。
「ほら、来いよ」と悪戯に笑ったフレッドは、私の腕を掴むと、そのまま林を抜けた先"叫びの屋敷"がある方へと足を向けた。
正直不安はあった、でも何となく
フレッドと一緒なら大丈夫な様な気がして…
私は彼に連れられるまま、足を動かした。
雪景色の奥に、叫びの屋敷がポツンと建つその静かな空間に、私とフレッドの楽しげな笑い声が広がる。
柵にもたれ掛かり、私とフレッドは他愛もない話をし続けた。フレッドからの下らない冗談に、返事を返すようなそんな会話。
だけど私は、そんな彼とのなんて事ない会話を心から楽しんでいた。正直、学校に帰りたくないと思ってしまうくらい…
でも、流石に夜までホグズミードにいる訳にはいかず…
辺りが暗くなってきた頃に、再びフレッドに連れられるまま、私と彼はハニーデュークスから繋がる"秘密の抜け道"を通り、誰にもバレること無くホグワーツに戻った。
寮の扉の前で、ニヤリと笑うフレッドに私は呆れながらも彼につられるように口角を少し上げて微笑んだ。
「お先にどうぞ?姫」と格好良くもふざけ混じりに言う彼にエスコートされるまま、もう生徒の姿がない談話室へと進む。
何となく、深紅色のソファーの背を撫でながら、そう言ってフレッドの方を振り向く。すると、フレッドは扉の近くで立ったまま少しだけ下を向いていた。
そう言って、フレッドは私の事を見つめた。
いつも自信満々の彼を見ていたからか、私は彼の不安げな表情に思わず目を見開いた。
彼も、こんな表情するんだ…そんな事を思いながら、私は1歩だけ彼に近づいてニコリと微笑んだ。
そういうフレッドの顔には、もう不安げな表情はなく
私の頬を撫で 瞳を見つめたまま、ニヤリと笑った。
ほんの少しドキッと跳ねた心臓が彼にバレて居ないことを願いながら、私の頬に当てられた彼の手をそっと下ろし、その手を握ったまま私は彼の事を見つめ返した。
私の頭をポンと撫でるフレッドに、私は少し視線を逸らしながら笑い返した。僅かに体の熱さを感じながら。
私がそう言って階段の方に向かうと、フレッドが「あなた」と私の事を呼び止めた。階段を登りかけていた足がピタリと止まる。
こうして、あの告白から始まったフレッドとの1週間は
あっとゆう間に幕を閉じた。
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更新遅くなりました🙇♀️
今回はフレッドとのお話でした🧡
お話を1話ずつに分けるため、多少キャラ崩壊があるかもしれません、申し訳ありません🙇♀️
暖かい目でお読み頂けると嬉しいです🍀*゜
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!