下りホームに降り、アイリは、涙を拭きながら、時刻表を確認した
アイリ「これね。兄様、戸川さんも聞いて」
ヒロト「うん」
アイリ「戸川 照之さんが、電車にひかれた同時刻にこのホームから、下り電車が発車しているの。ひょとしたら、その下り電車に、右腕が、引っ掛かり運ばれた。兄様、右腕のこと、何かニュースの記事にあった❔」
ヒロト「イヤ、右腕が切断されたことすら、記事にない❗」
アイリ「電車が終着駅に着いたら、駅員が点検して廻るのよ。酔っぱらいが、いないか、忘れ物はないか、とか、右腕が発見されれば、こんな、珍しいこと、ないから、記事になっているはずよ。」
ヒロト「切断された右腕。終着駅で発見❗みたいな❔」
アイリ「そう❗そんな感じの記事がない。と、言うことは❔」
ヒロト「と、言うことは❔」
アイリ「電車に引っ掛かかった右腕は、どこか、途中の、人目に着かない線路脇に落下して、まだ、発見されてない❗」
ヒロト「なるへそ❗」
アイリ「でも、これは、あくまでも、私の仮説。」
ヒロト「カセツ❔」
アイリ「かも、しれないって話」
ヒロト「なるへそ❗」
アイリ「この仮説を信じて、私と一緒に電車に乗ってくれますか❔」
まばたき、一回、yes
ヒロト「あ、消えた❗」
アイリと手をつないでいるのに、戸川 照之さんの姿が見えない
アイリ「水が渇いてしまったんだ。兄様もう一度、お水をかけて」
僕は、ペットボトルの水を手にかけて、アイリの手を、握った。
戸川 照之さんの姿を、また見ることができた。
戸川 照之さんは、アイリのことを、じっと見つめている。
アイリに、全ての希望を、かけているようだ。
アイリ「来た。これ、この電車に乗るわよ。」
僕達が、今いる駅は、JR中央線 新宿駅
これから、乗るのは、下り、青梅線直通 奥多摩行
そして、右腕が引っ掛かり運んだと、思われる、事件のあった夜、発車したのも、この、
下り、青梅線直通 奥多摩行
この線路の、どこか、右腕がある。かも、しれない。
僕達は、電車に乗った。車内は、比較的空いていて、座席に座ることができるが、あえて、自動ドアの側に立って、窓の外を見る
アイリ「ミャア、あなたも、なにか、感じたら教えて」
ミャア~😸
ミャアは、座席に飛び乗り、子供が、窓の外を見る様に座る。
アイリは窓の外を、見つめている。
だが、走る電車の窓から、どこかに、落ちている、右腕を探す
無理だ。
しかし、思い詰めた表情で、窓の外を見る、アイリには、言えない。勿論、戸川 照之さんにも、、、
戸川 照之さんは、僕達にとって 他人だ。
今日、初めて会った。血まみれの幽霊として、
そんな人のため、アイリは、必死だ
「なんとかしなきゃ、私にできること。私にしか、できないこと❗」
泣きながら、アイリが、言ってたことを思い出す
わかった アイリ
では、僕は、アイリのために、できること。
僕にしか、できないことをしよう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。