第3話

一話
566
2022/06/20 12:28
みのり
ファン…!? わ、わたし…の!?
あなた
はい…あの、あの、 MORE MORE JUMP‼︎のみんなが…本当に大好きなんです


初対面で何を言っているんだ、と苦笑。


私からは大好きな推し。

でも、みのりから見たらただの不審者って思われても仕方ない。


だって私、みのりより相当身長高いし…。






見覚えのあった、綺麗な色の髪の毛の少女を慌てて追いかけたら、あろう事か推しだった。


ありがとう神様。

私あまり神様なんて信じてなかったけどこれからはちゃんと信じるね。







……でも。

緊張している心の隅が囁いた。


「みのりだって、裏があるかもよ?」

「本当は、あんな子じゃないかもよ?」






なのに、なのに。


みのりは、配信の時に見せたものと変わらない…いや、もっと、顔中に喜びをみなぎらせて、私の手をぎゅっと掴んでくれた。


みのり
ほ、本当ですかっ…!? すっごく…すっごく嬉しい!
あなた
…!







–––あ、だめだ、うちの推し可愛い…。





元々、音楽ショップに行って好きなサークルのCD買おうと思ってたけど今度にしよう。

ちょっとでもいいから推しと同じ空気を吸いたい。


あなた
私も…まさか、同じ街にみのりちゃんがいるなんて知らなくって…
みのり
その制服、神高のかな…? 私が宮女だからかなぁ…



こんな一ファンにも明るく接してくれるみのりへの感謝、愛が溢れ出して死にそうになるけど我慢する。

みのりさん、アイドルがそんな個人情報ダダ漏れにしちゃあかんのですよ。




ダメ元で、誘ってみる。

あなた
…あ、あの、よければいいカフェを知ってるんですけど…奢りでいいので、行きませんか…?
みのり
あ………も、申し訳ないんですけど、私も今から配信で…


私も連れてって! なんて自分勝手なこと、言えるはずもない。

膨らんでいた期待が萎んでいく。



と、みのりがはっとしたようにスカートのポケットを探り始める。
あなた
…えっと、みのりちゃ…?
みのり
どうぞっ!! あの、私…自分のファンって人、あんまり見ないから嬉しくて…よかったら、お互い暇な時に、遊びたいなって! それじゃあ!


嵐のように去っていく少女。

手に残ったのは、手書きの丸っこい文字のアドレス。

あなた
〜〜〜っ…




…だからみのりさん、見知らぬ人にそんな個人情報を垂れ流しちゃ、ダメなんですって…。

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