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第1話

『 今も未来 』
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2019/11/09 22:07
☆0☆



いつかは…
結婚して…
子供産んで…
家庭を築くんだろうけど…


そんなのまだ、考えられない。



私に未来なんて…



無いかも知れない。







☆1☆


親友と親友が付き合ってから、学校に行くのが辛い。


光「〇〇 おはよ〜(笑)」
〇「光 おはよ…」


ほら!
今だって、私と合流したとたん、繋いだ手を離す。


裕「〇〇 おはよ〜(笑)」


私達3人は仲良しだった。


〇「裕翔 おはよ…」


けど今は…
居心地が悪くて辛い。


裕翔「〇〇 どうしたん?最近 元気ないじゃん?」


お前らの せいや!
なんて、言えるわけない。


〇「体調 悪い。」

光「え、大丈夫?」

〇「う〜ん?保健室 行くわ…」


サボりグセが付いてしまった。



保健室のベッドはふたつ。
そのうち ひとつには、だいたい誰かがいる。


ふたつ目のベッドに腰を掛け、スマホを取り出し、イヤホンをした。


こうして音楽を聴いていると、ふたりの事を考えなくなる。

都合がイイのだ。

私はそのまま、仰向けに倒れ、目を閉じた。







☆2☆



?「…………………く会うな〜?」



誰かに声を掛けられた気がしたが…


気のせいかな。


そう思った瞬間、イヤホンの片方を取られた。


〇「チョットぉ〜!!!」


私が起き上がると、隣に座ってきた。


?「何 聴いとるん?」

〇「え……WEST…」

?「マジ?聞かせて!」


と言いながら、私から奪ったイヤホンをした。

小さくリズムを取りながら…
そのうち 歌い出した。

?「♪そぉばにぃぃてぇ〜♪この歌 好きやなぁ〜」

〇「そうですか。」

?「ヤなこと あったんやろ?」

〇「急に何ですか?関係ないでしょ?!」


誰かも知らない人に、自分の悩みとか話さないでしょ?普通?


?「関係あったら話してくれるん?」

〇「えっ?」


この人、何言ってんの?


キーンコーンカーンコーン♪


?「やったぁーッ!次 体育やねん!〇〇行こ!」







☆3☆



〇「えっ?なんで私までぇ〜?!」


私は腕を掴まれ、教室までダッシュさせられた。


?「はよ、着替えろよ!」


そう言うと隣の教室へ入って行った。
そんな私をクラスのほとんどが注目していた。


光「〇〇!重岡くんと友達なの?」

〇「光、あの人 知ってんの?」

光「えっ!〇〇知らないの?
重岡くん、カッコイイし、笑顔が可愛いし、メッチャ モテるんだよ!
学校中の女子が知ってるのに!
あんた女子じゃなかったの?」

〇「知らんもんは知らんの。」


体育なんて、気が乗らないのに…


光「着替え行くよ!」


と、光に引っ張られ…
しょうがなく…


久々の体育着。
しかし、なんでウチの学校は、ハーフパンツじゃなくて、短パンなの?
小学生か!!!

これも嫌いで、体育はヤだのに…


体育は男女別。
隣のクラスの女子も、校庭に集まっていた。


後ろから誰かが肩に腕を乗せてきた。

光か?
裕翔か?






☆4☆


私が振り返る前に、小声で耳打ちした…


重「お前、足キレイな…」


っ!!!はぁ?!!!

ビックリした私を追い越し、男子の集合場へ駆け足で行ってしまった。

そこにいた女子達に、またもや注目されてしまった。


光「重岡くん、今 何か言ってたでしょ?!」


光が、興味深々で聞いてきた。


〇「な、何も言ってないよ!」


言える訳ない!
今でさえ、恥ずかしくて顔が赤いのに!
自分でも分かるくらいに…


なんなの?アイツ!!!


昼休み。
私達はいつも3人で食べるんだけど…


重「〇〇〜?購買〜」


後ろのドアから顔だけ覗かせてる。
しかも笑顔だ…


〇「私、お弁当〜」


自分の席から返事をして、そっぽを向いた。


重「ええやん!行こ!」


と、私の隣まで来てそう言うと、
また、腕を掴んで連れて行かれた。


〇「チョット、なんで私がぁ〜?」






☆5☆


たくさんの生徒が見ている中で、
男子に腕を掴まれ歩くのは、かなり恥ずかしかった。


重「ココで待ってて!」


と、購買の男子生徒の人だかりの中へ消えて行った。

私、来た意味あったの?
何がしたいの?

この人の行動が、全く読めなかった。
すると…


〇「ほいっ!」


と、ジュースを軽く放られた。


〇「わっ!!!」


いきなりで、慌ててキャッチした。
ミルクティーだぁ!


重「好きやろ?」

〇「えっ?」

重「ミルクティー。」

〇「あ、あ〜ミルクティーね、好き。」


って、なんで知ってんの?
この人、何者?


この日から一週間、毎日顔を出すようになった。

さすがに、クラスの皆んなも、気にしなくなってきたが…

毎日、腕を掴まれ連れ出されるのに、
私は慣れなかった。


〇「あのさ〜なんで毎日来るの?」

重「嫌か?」

〇「恥ずかしいじゃん!腕掴まれて歩くの…」

重「そっか…」


えっ?
まさか、落ち込んじゃった?






☆6☆


いつも笑顔の彼がショボくれてると、
なんか、調子 狂うな…



次の日、私はまた保健室でサボっていた。

珍しく空いていた、ひとつ目のベッドに寝っ転がり、イヤホンをした。

目を閉じると、浮かんできた…
彼の笑顔。
左上の頬のエクボ。
可愛いんだよな…



重「…………………り、ココかぁ〜」



ん?デジャブ?

そう思った瞬間、片方のイヤホンを取られた。


〇「…やっぱり来たか…」


私が起き上がると、また隣に座った。


重「迷ったんやけどなぁ〜来てもうたわ!」


そう言って、笑顔を見せてくれた。
やっぱり可愛いな…


〇「聞きに来たの?」

重「おん。」

〇「分かった。じゃあ、話すよ。」


私は…
『親友同士が付き合ってから、居場所が無い気がして辛い』と、打ち明けた。


重「ありがとな。話してくれて。」

〇「う、うん。」

重「でもな………そんな事、知っとったで。」

〇「・・・えっ…」


訳が分からなかった。







☆7☆


なんでこの人、なんでも知ってるの?


重「〇〇さぁ、俺の事 知らんかったやろ?」

〇「うん。」

重「女子やないんか?」

〇「なに、モテますアピール?」

重「モテへんから苦労してんねん!好きなやつに!」


ん?ん?
サラッと言われても理解できない…


重「関係ないって言われたし。」

〇「それ 私の事…………だね。」

重「でも、話してくれた。〇〇の中に、やっと俺が存在する。」


まぁ…そうだね。
毎日、引っ張り廻されてたからね…


重「俺 今、メッチャ嬉しいんよ。」

〇「…なんで?」

重「これから先の未来 全部、〇〇の中に俺が存在すんねん!」

〇「…未来……」


私に未来なんて、存在するのか?
光と裕翔みたいに、お互いを想う人もいない。




ん?いるのかも?
もしかして、、、コレなの?







☆8☆


重「なぁ?“ 今も未来 ” だって、知っとった?」

〇「え、今も未来?」

重「おん。人を想う気持ちってな、大人になっても変わらへんのやて。」

〇「はぁ…」

重「やから、今の想いがずっと続くなら、未来も同じ気持ちでいるんやて。」




『今も未来』




私が歳を重ねて、お婆ちゃんになっても、同じ想いでいられるの?


重「明日からさ、学校 一緒に行こ!」

〇「えっ!また腕掴まれるのヤダ!」

重「掴まんから!ええやろ?」

〇「う〜ん…でもぉ…」

重「ミルクティー おごるから!」


ふふっ…可愛い。


〇「オケ!ミルクティーね!絶対、腕掴まないでよ?!」

重「分かりやした!!!」


と、言って敬礼した。
そのウザさが、何とも言えず…



良かった。







次の日の朝。

一緒に行こうって言われたけど…
待ち合わせしてないし…

私はいつもの時間、いつものペースで学校へと向かった。








☆9☆


だいたい いつも この辺で、光と裕翔が やって来る。


ドサッ!!!
背中に誰かが乗ってきた!

誰だか予想はついた。


〇「うっっ……重い…」

重「おはよ!」

〇「降りて。」

重「お〜は〜よ!」

〇「だから降りて!!!」

重「お〜は〜よ〜ぉ〜!」

〇「はいはい。おはよ。」

重「よし!」


やっと降りてくれた…


この日から一週間、これが続いた。


〇「あのさぁ…乗っかるのやめてくれないかな?!」

重「なんで?」

〇「なんでって…イヤだから…」



本当は、イヤではないんだけど…



重「ん?」


そう言って、顔を覗き込む。
バ、バレてるのか?


重「分かった…」

〇「あ、ありがとう…」


や、「ありがとう」も、変な話だけど…

また、落ち込ませちゃったかな…


重「ほな、違うのにするわ!ええやろ?」

〇「違うのって何よ?」

重「おぉ〜たぁ〜のぉ〜しぃ〜みぃ〜!」


ウザいな…あいかわらず(笑)



その夜、私は彼の夢を見た。







☆10☆


重「〇〇!おはよ!」


いつもとは違う登場に、なんだか違和感だが…


〇「お、おはよ…」


一応、返してみた。


そう言えば最近、光と裕翔に会わないなぁ〜

いつもなら、この辺で…

辺りを見渡してみると、後ろの方で仲良く手を繋いでいた。

なんで話し掛けてこないの?
やっぱり、私は邪魔なんだな…

分かってたけど…なんかね…


光と裕翔の仲を、素直に喜べたら、どんだけ楽なんだろう?

ふたりが傍にいない事が、淋しかった。
もう、光にも裕翔にも、甘えられない。


重「そんな顔 すんな…俺がいるやんか…」


そう言うと、
私の左手をスッと取った。


珍しく、真面目な顔で見つめてくるから、
思い出した…


昨日の夢。



恐らく、ずっとずっと先の未来。

膝まである草たちが、風でなびいていて、
そこに立ってる彼の、シャツの背中が 風で膨らんでいた。







☆11☆


彼が手招きするから、草を またぎながら ゆっくり傍まで行く。

待ちきれない彼が、チョット戻ってきて、
私の左手をスッと取った。


重「行こ!」


グングン引っ張られて、丘の上まで行くと、
彼が手をかざし見上げる先に…



もう少しで夜みたいな、金環食がみえた。





_____



今、彼が取った左手に、何の違和感も感じなかった。

いつか…マサ夢になると思ってたから。



重「俺と…付き合ってくれへんか?」




私は思った。



彼がショボくれて笑顔が無くなるのも、
この手を離してしまうのも、
あの夢がマサ夢にならないのも、、、









嫌だ。








☆12☆



〇「行こ!」




彼の手を引き走り出した。



私の中に、未来へ繋がる確かな感情。




重「ちょっ、待ってぇ〜!返事〜〜?」



昨日の夢が全てマサ夢になるのか、彼と一緒に確かめよう。

今のこの想いが、未来でも同じでありますように。



重「あわぁぁ〜〜靴 脱げそうやぁ〜〜」



そして、マサ夢になった時には…


今より、もっっと素晴らしい奇跡が訪れますように!



そう願いながら走った。







彼の手を引きながら…








☆13☆


それから、、、




重「〇〇 おはよぉ〜」




後ろから小走りに来た彼は、私の左手を取って歩く。




光・裕翔「「〇〇〜おはよ!」」

〇「あっ!光、裕翔、おはよ!(笑)」




手を繋いで歩く、私と彼の後ろに、
手を繋いで歩く、光と裕翔。






                                                  ☆fin.☆

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