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「カオリか…綺麗な名前だな」
そんな一言を言って男は小さく微笑んだ。
私は不覚にもドキリとしてしまい、慌てて首を振った。
「あっ、あなたこそ誰なん「ぐ〜〜」
頬が熱くなるのを無視して問いかけた私の言葉は男のお腹の音でかき消された。
「…」
「…」
「…お腹、空いたんですか?」
「…」
そう問いかけると男はフイッとそっぽを向いてしまった。
けれど、お腹の虫は素直で、ぐーぐーと空腹を主張していた。
私はふぅ、と溜め息を吐いてからその場から立ち上がった。
すると、男は素早く私の方を振り返った。
その顔は、まるで何処に行くんだ、と言わんばかりの表情で…
(なんて分かりやすいヒト…)
私は可笑しくてクスリと小さく笑った。
「オムライス、好きですか?」
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。