インターハイでは結果がふるわず、テストもまあ、赤葦くんには負けたけどまずまずの結果で夏休みに突入した。1週間後にはまた夏合宿が控えている。インターハイで負けてからみんなの士気が高まっているのをひしひしと感じる。特に木兎さんは苦手なストレートを克服してきているよう。
ドリンクがなくなるペースも前よりずっと早くなってみんなの気合を象徴している
練習終わりの自主練もいつもより長く、最近はわたしもボール出しを手伝っている。
今回の合宿は1週間にわたり森然高校で行われる。前回の合宿よりも長く、気温が高いので体調面には気をつけなくてはいけない。
バスに乗り込み出発して数十分でほとんどの人が眠りについた。私は監督に頼まれていた前回の合宿のデータとインターハイのデータをまとめていたので寝る暇はなかった。ねむいよー。
到着のちょっと前に監督にノートを提出してやっとゆっくりできると思ったらついた。
控え室に荷物を置いてドリンクを作る。今回は私は梟谷の方のマネージャーだから、、、だからなんだ。笑
仲直りしたあの日から如月呼びが定着した赤葦くんだけど私はまだ全然慣れない。からあんまり呼んでない。うーーん。
あっという間に1日が終わり自主練の時間。第3体育館も少し賑やかになって、3対3をやっているこれを眺める時間が私はすごく好きだ。
腰を屈めて目線を合わせてかわいーって言ってくれるリエーフがすごく可愛かった。
ズルズル引きずられていくリエーフに手を振りながら食堂へ向かおうとすると、ぐいっと引っ張られた。
ふくれた。かわいいなこの野郎。
じゃあ、と手を振って駆けて行った背中を見ながらなんだか心臓がどこどこしてきた。なんだこりゃ。病気か。
ほわほわした気分で風呂に入って溺れそうになって雪ちゃんとすずちゃん先輩に助けてもらいながら、いつものように頭は乾かさずフルーツオレを発見したのでそれを買って部屋に戻ると赤葦くんが来るまであと20分ほどあった。
告白?こくはく、こく…はく???!
ぎゃーぎゃーと騒ぎながら行く準備を進めているとパシッと手を掴まれた
嫌な予感
ウキウキ気分の2人に鏡の前に座らされた。
全然解放してくれる気がなさそうなので諦めて大人しくする。たしかにちょっと邪魔かもしれない。ドリンク洗う時とか水につくんだよなぁ明日からしばってこうかな
そこには見事にポニーテールになった私がいた。おおおすっきり
コンコンコンっとノックの音がした。時計を見るとちょうど9時だった
ガチャっと勢いよくドアを開けたせいで前のめりになってぶつかった。いだっ。
えへへっと顔を上げると赤葦くんは目を見開いて逸らした。でもこれはきっと照れている。そのくらいはわかる。
すねた。すね葦くん。自分で心の中で笑ってしまった。これはシリーズ化できるような気がする。
体育館に向かう渡り廊下を歩いて、昼間ペナルティーをやっていた小高い丘にでる。もしかして赤葦くんはペナルティーがやりたいの?M葦くん?
心の声の答えが出てちぐはぐになった返答に?を浮かべながら振り向いた赤葦くんは月夜に照らされてとても綺麗だった。なんかめちゃくちゃいい風なこと言ったな私。
坂を登ってる途中にこけて転びそうになったのを赤葦くんが助けてくれて、そのまま手を差し出された。
手を取って歩き出して、その時急に自分の心臓の音が聞こえたドキドキドキドキ。あれ?なにこれ。うるさい自分の心臓。
すごすぎて、無意識のうちに手をブンブン振っていた。恥ずかしい。
手を繋いだまましばらく上を見上げていたけど、手を繋いでいるってことを意識したら冷静に星が見れなくなって恥ずかしくて、手を離してしまった。
気まずい。離したら離したで気まずい。けど、なんか心臓がもたないような気がして。
これ、理由になってますか?!なってるのかな。うんなってるよね。いや、なってる?!
プルルルルルプルルルルル
ブチッ
結局質問の答えは聞けないまま、丘を下りて部屋まで送ってもらった。帰りは手を繋ぐこともなく、ちょっと寂しいなーって思ったりしたけど、自分で離したくせにこの野郎と自分に喝をいれて部屋まで戻った
名前をいつも通り呼んだだけなのにむすっとされた。…?
やばいかわいいかっこいい。呼び捨て…赤葦?それとも…京治?難易度が高いやめとこ。なんかまた緊張してきたぁぁぁ
言い終わった瞬間にドアを開けて部屋に入った。やばいやばいやばい。心臓収まらない。静まれ自分の心臓ーーーー!
入れ違いで雪ちゃんが外に出て行った。でもそんなことを気にしている余裕はなくて、すずちゃん先輩に抱きついて、なんかもうとにかくやばかった。
カシャーカシャー
雪ちゃんが戻ってきてニヤニヤしてるから赤葦くんとなんかあったのだろうかって思って胸がチクっとして、それもまた初めての感覚で戸惑った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。