何となく生きづらくて
何となく居心地が悪くて
何となく不安が募って
虐めだとか
育児放棄だとか
家庭内暴力だとか
“ 死ぬこと ” に対して真っ当な理由を持ち合わせてる人間は
いったいこの世にどれくらいいるのだろう
命があるだけで有り難いのだと
生きていることこそが尊いのだと
そんな生命の尊厳を押し付けるような普遍的思考を
どうしても寛容できない
そんな俺は
今からこの柵を乗り越える
誰もいない空へ向かって
小さく挨拶を投げる
死ぬ間際にこんなことをする俺も
きっと “ 普通 ” に染まってしまっているんだろう
靴を綺麗に揃えて
紙切れをその中に押し込んで
震える手に気づかないフリをして
目の前の格子を掴んだ
後ろから飛んできた声に
思わず身体が反応してしまう
こんな廃ビルの屋上に誰がいるなんて
少しも考えていなかったから
気づけばそう口走っていた
一体何を言っているんだろう
俺が、俺のために、俺の意志で
今からこの命を絶ついうのに
死神、というワードに
少し緊張を覚える
今更何を恐れているんだろう
大体自殺しようとしている人間に向かって死神だなんて
ジョークでも笑えない
最期くらい独りで穏やかに過ごしたかったのに
頭のおかしい奴に遭遇してしまった
よりにもよって死神と名乗る男
時期外れのハロウィンを見たようで
酷く興冷めした
何やら一人で呟いたあと
くるりと此方を振り返った
笑顔で宣言した死神とやらは
確かに、俺の名前を呼んだ
次回 気まぐれ













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。