音羽side
私が再び高瀬くん達のところへ戻って来ると…
キスするくらいだから、本当だと思ってたけど…実際に言われると、この上なく傷ついてる自分がいる。
当の本人に、直接聞こうと思って来たけど、どこに行ったのかな…
3-4の、前…
私は全力で走った。
3-4の前に着くと…
本当に、手を繋いで歩いてる…
高瀬くん…磯田さんのことが好きだったの…?
高瀬くんが、ぱっと手を離し、こちらへ近づいてきた。
え…?私…?
呼ばれた名前が、やけに懐かしく感じた。
磯田さんも駆け寄って来た。
本人の口から言われたその言葉は、ひどく私の耳に響いた。
高瀬くんが口をつぐんだ。
やっぱり、沙那ちゃんの言う通り、何か隠してる…
磯田さんが、私に向かって冷たく笑った。
高瀬くんと磯田さんは、再び手を繋いで歩いて行った。
辻野くん…
磯田さんと高瀬くんは、何か隠してる。
それが何かさえ分かれば…きっと、高瀬くんを救えるはず。
私は、拳に力を込めた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。