第10話

過去
135
2019/02/19 11:08
実初ちゃんと別れた後、家に帰ると、家の前に高瀬くんがいた。
音羽
音羽
ご、ごめん、待たせちゃった
高瀬くん
高瀬くん
いや、大丈夫
音羽
音羽
じゃあ…これ
高瀬くんにチョコを渡した。
高瀬くん
高瀬くん
ありがと、お姉さんいる?
音羽
音羽
まだ帰って来てないけど、なんで?
高瀬くん
高瀬くん
この前のご飯のお礼を
音羽
音羽
あー、渡しておこうか?
高瀬くん
高瀬くん
…お願いします
高瀬くんは、私に紙袋を渡した。
音羽
音羽
あの…ちょっと聞きたいことがあるんだけど
高瀬くん
高瀬くん
…なんだ
音羽
音羽
前に、「私の愛想笑いを見てると、昔の自分を思い出して、イライラする」って言ってたじゃん
あれってなんで?
高瀬くんは、少し考えた後、私にこう言った。
高瀬くん
高瀬くん
小学校の卒業アルバム持ってるか?






私は、小学校の卒業アルバムを持って、再び玄関へ向かった。
音羽
音羽
あったよ
高瀬くん
高瀬くん
ありがと
…これだな
高瀬くんは、あるページの一人の人物を指差して、私に見せた。
音羽
音羽
え、この人って…
高瀬くん
高瀬くん
篠田新、俺の旧名だ
親が離婚して、高瀬になった
高瀬くんが指差した、篠田新という人物は…少し太っていて、眼鏡をかけた、地味な感じだった。
音羽
音羽
ってことは…これが昔の高瀬くん…?
高瀬くん
高瀬くん
そういうこと
嘘…
高瀬くん
高瀬くん
この時の俺は、何に対しても卑屈で、勉強も運動も出来なくて、おまけに太っていた
人前では、合わせてばかりで、そんな俺に呆れて、父親が家を出て行った
何もかもが、今の私と同じ…
高瀬くん
高瀬くん
そんな自分でいるのが嫌になって、不登校にもなった
でも、中学に入る時に、俺は決意した
「変わる」って
「変わる」…
高瀬くん
高瀬くん
春休みに必死に痩せて、勉強も運動も上を目指して努力した
中学に入ると、同じ小学校だった奴も、俺のことが分からなかった
音羽
音羽
……
高瀬くん
高瀬くん
正直、自分でも驚くほどの変化だった
今の自分は、俺としても誇りに思える
高瀬くんは、息を吸って言った。
高瀬くん
高瀬くん
誰だって、変われる
高瀬くん
高瀬くん
悠木も、自分に自信がないなら、自信が持てるまで努力すればいい
それは、自分にとって、大きな経験になる
音羽
音羽
高瀬くん…
高瀬くん
高瀬くん
小松といる時、楽しそうに笑ってたじゃん
それだけでも、大きな変化だよ
高瀬くんは…優しく微笑んだ。
高瀬くん
高瀬くん
じゃあ、また明日
私は、高瀬くんの腕を掴んだ。
音羽
音羽
待って!
高瀬くん
高瀬くん
…何
さっきの優しい顔と打って違って、いつもの面倒くさそうな表情を浮かべた。
音羽
音羽
話してくれて、ありがとう
私がそう言うと…高瀬くんは、照れくさそうに、「おう」と言った。

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