勉強、運動、技術、才能、音楽、全てが苦手。
そんな、何の取り柄もない私は、笑っていないと、友達もいない。
いつも、愛想笑いして、みんなの空気を読んで、仮面を被る。
本当にこれでいいのかなって思っても、私にはこれしかない。
小松沙那ちゃんは、私のクラスメイトで、よく一緒にいる。
いわゆる「友達」だ。
移動教室の時は、いつも沙那ちゃんと、数人の女子と一緒に行く。
一見して、何気ない会話だけど、私は愛想笑い。
みんなに合わせるだけで、話にはついていけていない。
…ほら、やっぱりついていけてない。
沙那ちゃんが手を振って、走って行った。
手を振って行った。
…また始まった。
私は、沙那ちゃんがいないところで、よく陰口をされる。
沙那ちゃんは、年齢を問わず、いろんな人と仲が良いので、沙那ちゃんについての陰口は聞いたことがないけど、私が標的にされる。
でも、陰口を言われるのも仕方なかった。
私は、何の取り柄もない、平凡な中学生。
私だって、なんで沙那ちゃんが一緒にいてくれるのか、全く分からない。
授業が終わった後、沙那ちゃんに声をかけられた。
…やっぱり、他の子には好かれない。
どうすればいいのかな…
私はこの時、まさか誰かに見られてるとは思いもしなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。