放課後、忘れ物をして、誰もいない教室に入ろうとしていると…
誰もいないはずの教室に、高瀬くんがいた。
私は、話を続けようと、必死に考えた。
すると、私が言い出す前に、高瀬くんが口を開いた。
急に、苦しい気持ちになった。
高瀬くんと磯田さん…そんなに仲が良いんだ…
私、諦めた方がいいのかな…
私が急いでその場を去ろうとすると…
高瀬くんが、私の腕を掴んだ。
さっき言いかけたことって…高瀬くんと磯田さんの関係のこと…だよね?
やっぱり…そうなんだ…
え…?
高瀬くん…磯田さんのことが好きってわけじゃないんだ…
あ!つい本音が出てしまった。
言い訳をすれば、余計なことを言ってしまう気がする。
そんなことになるくらいなら、…想いを伝えた方がいいよね…
きっと、今がそのチャンスだ。
頑張れ、私。
あとちょっと。
あとひといき。
言えた、言えたよ、私。
高瀬くんが、口を開けて、呆然としている。
高瀬くんがこんなにびっくりしてるの、初めて見た…
私、すごいこと言っちゃったんだな…
『まだ校舎に残っている生徒は、校舎を出ましょう』
私は、静まり返ったその場を後にした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。