第4話

第4ページ#彼女
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2018/02/11 16:27
城山櫂斗
淡島、蕗?
どうしよう?という5文字しか頭の中に思いつかなくって、逃げ出してしまった。

でも、彼の足は日々鍛えられているからかとても速く、私はもちろん追いつかれた。
「急に走るなよ…」
「え!あっ、だって…」
会話が止まる。ああ、もうしょうがない。
「はい、そうです。早退多いのも、ウィッグ付けてるのも、バレないために…は!」
そうだ。私は自分の存在を言ってはならない。
この人、絶対SNSやってるよね…晒されて、拡散されたらもう私のモデル人生は終わってしまう。
「何となく、蕗乃の言いたい事分かるよ。ああ、大丈夫。俺LINEしか基本使わないし、晒すのも可哀想だから。」
櫂斗くんは私の事を考えてくれてた。それどころか、蕗乃って、ちゃんとした名前で呼んでくれた。

そう思った時、チャイムが鳴ってしまった。
「なっちゃった…」
「いいよ。1時間くらい。あっ、それよりもさ…LINE、交換したいんだけど…いい?」
「あっ、うん!ありがとう」
胸が高鳴る。撮影前の緊張でもない、なんとも言えない感じ。当分前の私には理解できなかった、恋という感情が、私の心の中にいた。

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