家に帰ってからもう3時間が経つ
俺は家に着いてからずっとベッドの上で目を瞑っている
目を瞑っててよく眠らないなと思うがそれは
頭の中をずっと彼女の言葉がリピートされているからである
「一人でいてどこか寂しそうだったから…救いたかった」
彼女が救いたかったという程…俺はそんなにもか弱そうに見えたのか
そんな自分に腹が立つ
何も出来ない無力な俺
女の子から救いたいと思われるほどの弱さ
理不尽な世界と同じくらい自分が嫌いだ
俺は机の引き出しに閉まっていたカッターを出し手首に押し当てた
けれど
カラン、チャラン(カッターが落ちる音)
、
、
、
それから2ヶ月が経った
俺の腕はリストカットのあとだらけ
けれど変わったことがふたつある
ひとつはまたいつも通り屋上に来れていること
もういじめるのがめんどくさくなったのだろうか。
2つ目は…彼女が屋上に来なかったこと
これは当たり前のことなのだろう
俺は2ヶ月前
彼女に最低なことばかりの言葉を浴びせた
謝りたいけど彼女はここには来ない
懐かしい
彼女が帰る度に言っていた言葉
けれどもう今ではその言葉を聞くことが出来ない
2ヶ月前の彼女はその言葉を言っただろうか
いや、言ってないな
そんなことを呟いていると
ガチャリ
屋上の扉が開く音がした
振り向いてみると
彼女がいた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!