第2話

富藤くんは世話好き!?
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2019/11/20 09:09
富藤 光牙
富藤 光牙
勘違いすんな。
ここで流血沙汰を起こされるのは
面倒だから、抱きかかえただけだ
うんざりした様子で、
富藤くんは私を引きはがす。

(あ……富藤くんは、
私を助けてくれたってこと?)

急に抱きしめられた意味を知って、
私は納得する。

(いきなりすぎて、わかりづらいけど……)
あなた

助けてくれて、ありがとう



笑顔でお礼を伝えると、
富藤くんはすっと私から視線を逸らす。
富藤 光牙
富藤 光牙
いいから、寝てろ
富藤くんは私の肩を押した。

──ポスンッ。

強制的にベッドに横たえられた私は、
富藤くんを見上げる。
富藤 光牙
富藤 光牙
……んだよ

私の視線に気づいた富藤くんが片眉を上げた。
あなた

あの、私……帰らなくてもいいの?


(さっき、さっさと帰れって言ってたけど……)
富藤 光牙
富藤 光牙
また、道端で倒れてえのか
あなた

それは嫌です!



ぶんぶんと勢いよく首を横に振ったら、
また頭がクラッとした。

(世界が回る……)

ふしゅーっと息を吐いて、
ベッドにぐったりと沈む私を
富藤くんは呆れたように見る。
富藤 光牙
富藤 光牙
そんだけ動けんなら、飯食えそうだな。
おら、これ食え
富藤くんはお盆を差し出してくる。

その上には梅干し入りの卵粥が載っていた。
あなた

おいしそう……

ふわふわと湯気が立っていて、
口の中にじわっと唾液が出る。
あなた

これ……どうしたの?

富藤 光牙
富藤 光牙
あ? 作ったに決まってんだろ
あなた

えっと、誰が……でしょうか?

富藤 光牙
富藤 光牙
俺が
あなた

俺って……富藤くんが!?

(料理できるんだ!)

驚きながらも、お盆を受けとる。
富藤 光牙
富藤 光牙
俺以外に誰がいんだよ。
いいから、薬飲んで大人しく寝ろ
富藤くんは市販の風邪薬を
私が持つお盆の上に置いた。
あなた

もしかして、買ってきてくれたの?

富藤 光牙
富藤 光牙
うちに薬なんて常備してねえからな。
お前が寝てる間に、薬局で調達した
あなた

富藤くん……

胸がじんとして、弱っているからか
泣きたくなってきた。

私は滲んだ涙を隠すように俯いて、
スプーンを握ると卵粥をすくう。
あなた

ふー、ふー、いただきます

息をふきかけてから、
ひと口、卵粥を食べた途端、
身体の芯から温まるような感覚がした。
あなた

おいしい……

染み渡っていく富藤くんの優しさに、
ぽろっと目から雫がこぼれ落ちる。
富藤 光牙
富藤 光牙
は? なんで泣いて……
あなた

ご、ごめんね。なんでだろう? 
なんか、ほっとして……

笑ってごまかして、お粥を口に運ぶ。

でも、涙は蛇口が壊れた水道みたいに
止まらない。
富藤 光牙
富藤 光牙
子供かよ。
泣くか食べるか、どっちかにしろ
あなた

そ、そうしたいんだけど……っ、
無理みたい

富藤 光牙
富藤 光牙
……はあっ、仕方ねえな

富藤くんはため息をこぼしながら、
私に手を伸ばしてきて──。
富藤 光牙
富藤 光牙
こっち向け
至近距離に、富藤くんの顔が迫って、
心臓が飛び跳ねた。

(な、なに!?)

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