第3話

不器用な優しさ
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2019/11/27 09:09
富藤 光牙
富藤 光牙
動くんじゃねえぞ
あなた

は、はい

びくびくしながらじっとしていると、
富藤くんは自分の服の袖で、
私の顔をごしごしと拭き始めた。

(あれ、これってまさか……)
富藤 光牙
富藤 光牙
鼻水つけんなよ
あなた

ふぁい……

(涙を拭いてくれてるの……かな?
富藤くんって、面倒見がいいんだな)

されるがまま、じっとしていると
富藤くんはまたため息をつく。
富藤 光牙
富藤 光牙
ったく、
なんで俺が子守しなきゃなんねえんだ
あなた

ご、ごめんなさい

富藤 光牙
富藤 光牙
謝罪はいい、
さっさと食って風邪を治せ
あなた

はい!

私は急いで卵粥を食べると、
ありがたく薬を飲んで、横になる。

(そういえば、帰りが遅くなるって、
家に連絡しないと)

私はスマホを探して、
もう一度身体を起こした。

すると、目の前にカバンが差し出される。
富藤 光牙
富藤 光牙
おらよ
あなた

あ、ありがとう

(気が利くな……)

スマホを取り出して画面を見ると、
時刻は17時。

もっと遅い時間だと思っていたので、驚く。
富藤 光牙
富藤 光牙
泊まんなら、
ちゃんと親に言っとけよ
あなた

へ!? 泊まるのは、
さすがに迷惑なんじゃ……

富藤 光牙
富藤 光牙
現在進行形で俺に迷惑かけてんだから、
今さらだろ
あなた

それもそうなんだけど、
富藤くんのご家族とか、
びっくりしちゃわない?


(もし彼女がいたら、勘違いされても、
富藤くんは困るだろうし……)
富藤 光牙
富藤 光牙
別に。うち父子家庭だから、
親父も滅多に帰ってこねえよ
あなた

え……

富藤 光牙
富藤 光牙
毎晩、女のところに泊まってっから
(じゃあ、この家で富藤くんは
ひとりきりなんだ……)
あなた

じゃ、じゃあ甘えてもいいかな?

なんとなく、
この人をひとりにしたくなかった。

なんでそう思うのかは、わからないけれど。
富藤 光牙
富藤 光牙
勝手にしろ
富藤くんはぶっきらぼうにそう言って、
私の食べ終わったお粥の器を片付ける。

そんな富藤くんを見つめながら、
私は横になった。
あなた

ありがとう……

うとうとしながら、私はお礼を口にする。

すると、手を止めた富藤くんに睨まれた。
富藤 光牙
富藤 光牙
お前のためじゃねえ
あなた

それでも……ありがとう

富藤 光牙
富藤 光牙
お前、俺の話聞いてたか?
あなた

だって、富藤くんは……
あの場所に私を捨て置くことだって
できたでしょ?

富藤 光牙
富藤 光牙
……あのあと、
お前がのたれ死んだりしたら、
見捨てた俺のせいになるからだよ
あなた

自分のことしか考えていない人は、
『見捨てた』、なんて……
思わないんじゃないかな

私は眠気に抗えず、目を閉じる。

真っ暗な視界の中で、
これだけは伝えなきゃと口を動かした。
あなた

罪悪感は……優しいからこそ、
感じる……ものだって……思う

富藤 光牙
富藤 光牙
…………
あなた

だから、
富藤くんは優しい……人……

夢か現実かわからなくなりながら、私は喋る。

すると、ふいにベッドのスプリングが
ギシッと鳴った。
富藤 光牙
富藤 光牙
簡単に人を信じんな。
俺がただ看病するためだけに、
お前を連れ帰ったって、
本気で思ってんのかよ?

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