とにかくもう夢中で走った。
車の準備をしてくれていたけれど、走っていけない距離ではない。
自分の足で、行きたかった。頼りたくなかった。
走って走って走って勢いよく病室のドアを開けた
先週まで笑顔を見せていた場所。
たくさんの笑い声が響いた場所。
お母さんの誕生日を何回もお祝いした場所。
まるで嵐が過ぎ去った後のように静かで冷たい空気がそこには流れていた。
お医者さんの顔を見れば分かる。理解できる。
でも、なんで。体は目の前にあるのに、あの声が聞きたい、笑った顔が見たい。
あなたって……呼んでよっ、、ねぇ、、
今すぐにでも駆けつけてやりたい。
俺に出来ることを全てやってあげたい。
だけど……足が動かなかったんだ、まるで鉛のように。
ここから先が地獄の入口かと思うほどそこの空気は張り詰めていた。
恐らく彼女は我々の存在に気づいてる。
だが、母親の手を握って離さない。まるでそこに魂があるかのように……
蘇らないのに、もう二度と話せないのに、
何度も何度も手を握りしめ、体を抱き寄せ、涙を流している……
俺らはその場を離れ、
外の駐車場で待ってよう、と。
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妹は泣きながら私の元へ来た
そして、母を見て崩れ落ちた。
言葉にならないほどの衝撃と悲しさの顔だった。
妹の前では泣きたくなかった、強い姉でありたかった。
だから溢れ出てきそうな涙を必死に堪えて妹の背中を摩る。
1度、親戚に妹を預けようと思った。精神的にも、いろいろと。
本人の承諾も得ている。妹が落ち着いたタイミングを見計らい
親戚に引き渡した。せいぜい1ヶ月くらいだと見込んでいる。
そしてそれから、、、
ウィーンと病院のドアが開く。
外の世界は狡い。まるで今までの出来事を嘲笑うかのように
太陽が照りつけている。
そして……
あのとき後ろにいたのは分かった、そこから帰ったのだとばかり…
なのに、なんで。その後ろ姿はさ……ねぇ、1番狡いのは、、先生だ
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。