第10話

ゾンビになっても守ってくれる
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2023/09/08 09:00

ばたりと目の前で倒れる涼太に、慌てて駆け寄る。
狩野なつめ
狩野なつめ
やだ!うそ……
死なないで!涼太!
あまりの衝撃に、
彼がすでにゾンビになっていることすら
頭の中からすっぽぬけていた私は、
何度も「死なないで」と叫んでいた。
周央涼太
周央涼太
……ゥ
狩野なつめ
狩野なつめ
涼太!
意識があるのか、小さなうめき声をあげた彼に
ほっとしたのも束の間。



───パァン!
─────パン、パン、パァン……!



追撃するかのように、
ライフルの弾丸は私達を襲ってくる。

狩野なつめ
狩野なつめ
きゃあ!
私は目を固く閉じて、
涼太を守るようにして身を屈めるのがやっとだった。

きっと自衛隊の人たちは私達を
ゾンビだと思っているのだろう。

鳴り止まない銃声、そしてじわりと頬に熱を感じる。

ツゥと頬を何かが垂れた。

手の甲で拭ってみると、
そこには真っ赤な血がついていた。
狩野なつめ
狩野なつめ
……これ血?
きっと知らない内に、銃弾が頬をかすめたのだろう。

次の瞬間、むくりと涼太が立ち上がった。
周央涼太
周央涼太
ぅガァああ!
雄叫びをあげるように叫んだかと思えば、
私に背を向けて立ちはだかる。
狩野なつめ
狩野なつめ
涼太何してるの!?早く伏せて!
だけど、声は届いていないみたいで
彼は銃弾から私を守るように両手を広げた。
周央涼太
周央涼太
……
狩野なつめ
狩野なつめ
だめ!やだ!
そんなことしないで!

─────パン、パン、パァン……!

彼の身体が銃弾を受けた衝撃で揺れる。

位置的に、頬、肩、そして脇腹。

しかし、それでも依然として立ったままの彼を見て
私はとある記憶がフラッシュバックした。


それは、まだ私達が小学生だった頃のこと。


─────
───



私は涼太との下校中に不審者に襲われたのだ。
不審者
お嬢ちゃん、こっちにおいで
なつめ
いや!はなして!!
無理やり私の腕を握り、
引っ張っていこうとする不審者に
涼太は小学生ながらも立ち向かってくれた。
涼太
その手をはなせ!
不審者
なにするんだこのクソガキ!
私を引き離し、不審者の前に立ちはだかる涼太。
両手を大きく広げて、私を守ってくれた……。
不審者
ちっ、邪魔者は消えろ!
不審者はおもむろにポケットからナイフを取りだし
まだ幼い彼のお腹に突き刺したのだ。

その光景は、今でもトラウマのように
私の脳裏に焼き付いている。

異変に気づいてくれた大人の人が
警察を呼んでくれて、不審者は無事逮捕された。

涼太も一時は危ない状態だったが
手術の末、無事回復し退院することができた。

───
─────



今でもその時負った傷跡は、彼のお腹に残っていて
私はいつもいたたまれない気持ちになる。


私を守る背中は、あの頃と何も変わらない。
たとえゾンビになったとしても私を守ってくれる涼太。

そして、いつの間にか銃声は鳴り止み
彼は再びゆっくりと地面へと倒れた。
狩野なつめ
狩野なつめ
涼太のバカ!
ゾンビになってまで
守ってくれなくていいんだよ
周央涼太
周央涼太
ゥ゙……
狩野なつめ
狩野なつめ
こんなの、絶対痛いのに……
泣きそうになっている私を見て
少しほっとしたように表情を緩める涼太。

そして彼はゆっくりと目を閉じた。
狩野なつめ
狩野なつめ
涼太!やだ、目開けて!

私は彼の冷たい身体をぎゅっと抱きしめる。

今度こそ本当に死んでしまったのかもしれない。

そんな不安がよぎり、今にも泣き出しそうな私に
茂みの方から誰かが声をかける。
おじいさん
おい!
そんな危険な場所で何しとんじゃ!
狩野なつめ
狩野なつめ
ひっ!
とっさの出来事に身体が固まる。
現れたのは、しわくちゃで今にも倒れそうな
ヨボヨボのおじいさんだった。

その見た目はまるで──
狩野なつめ
狩野なつめ
ぞ、ゾンビ!?
おじいさん
誰がゾンビじゃ!
失礼な!

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