おじいさんの手厚い看護もあってか、涼太は
みるみるうちに回復していった。
それに反して、私はこの先の不安に押しつぶされそうに
なっていた。
涼太が捕まえてきた魚を焚き火で焼きながら、
ぼーっと火を眺めていると、おじいさんが隣に
座り込んできた。
私の側で大人しく座っている涼太を見て、
おじいさんは元気に笑った。
そういえば、こんなことになってからは
まともにご飯を味わうことなんてなかった。
おじいさんなりの気遣いなのか、
こんがりと焼けた魚の串をぐいっと押し付けてくる。
塩だけで味付けされた魚なのに
その味は、おじいさんの優しさと相まって
じんわりと身に染みた。
図星をつかれて、思わず顔をあげる。
涼太の方をチラリと見ると、
パチパチと燃える焚き火に興味津々だった。
おじいさんは何かを思い出すように遠くを見つめた。
悲しげな横顔に、
なんて声をかけていいかわからなかった。
そう言って二カッと笑う笑顔に
ほっと心が軽くなった気がした。
おじいさんになら話したいと思った。
涼太に「好き」という想いを伝えられなかった後悔を。
おじいさんは、私の話をただただ優しい眼差しで
聞いてくれた。
話を聞いてくれるだけで、
どこか救われた気持ちになる。
もしかしたら私は、
自分の中に色んな感情を背負い込みすぎて
いたのかもしれない。
カッカッカと嬉しそうに笑うおじいさん。
そう言っておじいさんは夜空を見上げた。
空には満天の星が輝いていて、
それは私が生きてきた人生の中で
一番綺麗な光景だった。