誰もいない家。
私だけ。
思い出すのは
みんなと馬鹿みたいに笑って、
騒いで、喋って、
そして、夜を共にして。
たった1日いないだけで
こんなに寂しいのか…
チラッ。
まだ時計は、9時を指している。
…じっとしていられなかった。
すくっと立ち上がり、
制服を着ていることなんて忘れたまま、
洗濯をし始めた。
見たくはないが、いや、
見たことはあるけど…、
みんなの男物の下着を
さっさと
洗濯機に入れ、洗う。
バタン。
洗濯はとりあえず終わり。
そして次は、、、
などと動き回り、終わった頃には、
時計の針は午後の2時を指していた。
今日は4時限しかなくて、
部活も何もないから、
みんな帰ってくる。
もちろん、ジョンヨンも。
さっき制服を着ていることに気付いたため、
制服を脱いで、
スキニーに、Tシャツ、
束ねていた髪をほどいて、
長いカーディガンを羽織り、
小さな鞄に携帯とスマホと、
みんなで撮った集合写真を入れて、
グロスをつけて、
家を出た。
電話、した方が、いい、かな、
ゆっくりと、
コールボタンを押した。
prrrr、prrrrr、、
ガチャ。
どうしよう、早く、
ちゃんと言わないと
ガチャ。
ツーツーツー…、
電話が切れた。
すぐに駅前のカフェに向かい、
入り、
入口から遠い席に座った。
頼んだケーキセットと紅茶が、
届いても、
ジョンヨンはまだ、来なかった。
時刻は3時半。
電話をしたのは、2時半だ。
なかなか来ないし、
紅茶が冷めちゃう_____、
そう思ってカップを持った、そのとき。
カランカラン。
店内にベルの音が響いた。
ジョンヨンが来た。
店員が去って、
2人、になる。
ジョンヨンの声はいつもより冷たくて、
でも、落ち着いた声だった。
フフッ、と笑い出したジョンヨン。
どうして、笑っているの??
おっかしい、と言いながら笑うジョンヨン。
でも、きっとそれだけじゃない。
話を一度きるために
まるで、
ジョンヨンがおびき寄せたかのように、
店員がやってきた。
失礼いたします、と
立ち去る店員。
そう言って1口だけ
紅茶を飲んだジョンヨン。
鋭い目をしたジョンヨン。
思わず怖くなってしまって、
目をそらす。
涙がこぼれ落ちていて、
ジョンヨンは本当にテテのことが好き、
そう思った。
気持ちを止められない…、
ジョンヨンの目は私を真っ直ぐな瞳で
見つめたままだ。
どちらも逸らそうとは、しなかった。
ジョンヨンと会ったときに、
仲が深まってきたときから、
間違えているんじゃなかった。
無意識のうちに、
気持ちを抑えていた、そのときから
私は間違えていたんだ。
ガタッ。
ジョンヨンがお金を置いて、
カフェから出て行った。
手を付けられなかった
2つのケーキと
冷めきった紅茶を、
ただ見つめていた。
それからその場に1時間いたが、
『紅茶を入れ直しますか?』
と店員が聞きに来ないあたりは、
安いカフェなのに、
気の利いたカフェだった。
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読んでくださってありがとうございます!
まだまだ続きます ~ 🦔🍑🍑🍑
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!