──── テヒョンside ────
あなたが、
部屋から出てこなくなって、
3日が経過した。
並行して、
学校に行かなくなったのも、
3日目だ。
🚪コンコン。
あなたの部屋の前。
1人、ノックをすると。
『だ、大丈夫っ、、だからっ、、んっ、』
と、誰かも名乗っていないのに、
あなたはか細い声で答えた。
「そっか…また、ね。」
『あ、まって…、、てひょっ、、、んぁぁ、、』
声が聞こえても、
何故か、ドアに背を向けることしか
出来なかった。
とある日。
あなたの部屋の奥にある、
俺とグクの部屋に行こうとしたとき。
《あなた~ ?いい子にしてた??》
って、
あなたの部屋に入っていくグクを見たのだ。
もしかして、
あなたが部屋にこもっているのはグクのせい…?
そう思い、
そっと部屋の中を見る。
そこには、
裸で、
細い手足に付けられた鎖に、首輪。
変わり果てた、あなたがいた。
『っ、、、!』
その場から、俺は
また、逃げることしか出来なかった。
知っている。
分かっている。
なのに、助けに行けない俺は、
ただの、臆病者だ。
同じルームメイトの
しかも年下のグクを、
今思えば、恐れていたのだ。
その日から、
隣のベッドでニコニコしながら
汗をかいたパジャマを着て寝るグクを
確認したあと、
涙を流しながら、
自分自身を殺したいと思いながら、
眠りにつく日が、続いた。
そんな、ある日。
あなたが、後ろから
走ってくるのを見た。
「逃げて、来たんだ…」
すぐに自分の部屋に入り、
走ってきたあなたの腕を引き込んだ。
『ちょ、引っ張るんだったら声かけてよ!』
そう怒る君。
久しぶりに聞く、
愛おしい声。
「ニヒヒッ。だって、グクに見つかっちゃうかもじゃん? 」
平然を装って、
言葉を並べることしか出来なかった。
パーカーだけ着て、
なんて、えろい格好をしているのだろう、と
心臓は早く動いた。
このまま、あなたと寝たい。
そう思ったが、グクがやってくる。
だから、ほかの部屋に…
あ、そうだ、ゲストルームにしよう。
だからあなたをゲストルームへ
連れていこうとした、のに。
あれで、
俺が自分の机に置いてある手紙を、
見なきゃあなたは
嫌な思いをせずに済んだのに。
手紙には、
こう、記されていた。
↓↓↓
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ヒョンへ。
あなたを俺が監禁してること、
知っているんでしょう???
だからね、あなたをこのまま逃がして欲しいなら、ゲストルームへ連れて行って、鍵閉めといてね。
僕が、すぐにあなたを愛しに行くから。
もうあなたの心は、僕のものだから。
ヒョンの弟 グクより
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ゲストルーム…
なんていう偶然だろう。
ペラっと、
手紙の裏を見ると、
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もし、やらなかったらどうなるか分かってる?
あなたが、痛い目にあっても知らないよ?
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…と。
きっと、俺が、助ける。
そう思って、
あなたを、部屋に連れていった。
入った途端、
ガチャンと金属音が耳に痛く響く。
絶望の声に戻ったあなたの声。
《さっすが、ヒョン ~ 。ありがとね ~ 。》
ポンッと肩を叩かれる。
違う。
俺はこんなことなんて、
したく、ないのに。
その日、
グクは戻ってこなかった。
…テヒョンside END
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!