鬼幽に刺さった矢の篦を伝って、柘榴の粒のような血が滴り落ちる。
血が滴り落ちる度、私の不安は募っていった。
陽火と陰火が鬼幽を心配するように彼の周りに浮かんでいる。
どうするのが正解なのか分からず、私の心臓が波のような動悸をうち始めた時だった。
鬼幽が発した声は力がなく、声というよりも息に近い、かすれた声だった。
その声で、私の波うつような動悸は止まった。
私は鬼幽を背中に背負い、白巖山に向かって歩き出した。
なるべく早く
でも、傷に刺激を与えないように慎重に
真夏の夜は暑くて歩くたびに一粒、また一粒と汗がこめかみを流れる。
何とか白巖山の麓までたどり着いた、山の木々の間から灯籠の淡い光が漏れ出ているのが見える。
森の入り口が見えてきたところで、陽火と陰火が入り口目掛けて飛んで行った。
私も一歩一歩慎重に歩みを進めていく、灯籠が立ち並ぶ階段の下まで来た時だった
階段の上からおばあさんが焦った様子で駆け下りてきた。
その後に続けて、他の妖怪たちが駆け下りてくる。
妖怪たちの間を掻き分けるようにして階段を下りてきたセンター分けをした茶色の髪に金眼の青年がこちらに近づいて来た。
その要と呼ばれる青年は鬼幽ではなく私の手を取り、
え、夫婦?結婚してってこと?あれ?この人と私、初対面だよね?てか、今この状況で言う?!
あかりはあまりに唐突な出来事に驚きを隠せなかった、困惑してその場で固まっていると
おばあさんが声を張り上げ、要の頬を平手打ちした。乾いた音が森中に響き渡る。
要は大きなため息をついたあと、私に背負われている鬼幽の腕を自分の左肩にまわし、空いている右手で鬼幽の腰を支えるようにして階段を登って行った。
おばあさんは、そう言うが私は不安で俯いた。
そうだ、この声白巖山の入り口を教えてくれたおばあさんの声にそっくりだ。
────次、顔を上げた時おばあさんや妖怪たちはいなくなっていた。
*
これは、私が鬼幽から後で聞いた話だ
鬼幽は突き刺さっていた矢を抜いた後、布団の上に寝かされていた。
他の者は、囲炉裏の周りを囲むようにして座っている。
しばらく、鬼幽に刺さっていた矢を囲炉裏の火で照らしながら見ていた山爺が口を開いた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!