第9話

人生初のプロポーズ
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2024/02/03 23:21 更新

鬼幽に刺さった矢のを伝って、柘榴ざくろの粒のような血が滴り落ちる。

血が滴り落ちる度、私の不安は募っていった。
神代 あかり
あ…救急車呼ばないと……
神代 あかり
(でも、鬼幽は妖怪だから人間の病院じゃダメかも……)
神代 あかり
(どうしよう、どうするべき…?)
陽火と陰火が鬼幽を心配するように彼の周りに浮かんでいる。

どうするのが正解なのか分からず、私の心臓が波のような動悸をうち始めた時だった。
鬼幽
……あかり…
鬼幽
…はく、がんざんまで…頼む……
鬼幽が発した声は力がなく、声というよりも息に近い、かすれた声だった。
その声で、私の波うつような動悸は止まった。
神代 あかり
わかった、痛むだろうけどちょっと我慢してね

私は鬼幽を背中に背負い、白巖山に向かって歩き出した。

なるべく早く
でも、傷に刺激を与えないように慎重に


真夏の夜は暑くて歩くたびに一粒、また一粒と汗がこめかみを流れる。
何とか白巖山の麓までたどり着いた、山の木々の間から灯籠の淡い光が漏れ出ているのが見える。
神代 あかり
大丈夫だよ、鬼幽。もうすぐ山に着くから。
神代 あかり
だから、あと少し頑張って

森の入り口が見えてきたところで、陽火と陰火が入り口目掛けて飛んで行った。

私も一歩一歩慎重に歩みを進めていく、灯籠が立ち並ぶ階段の下まで来た時だった
柳婆
鬼幽大丈夫かい!?

階段の上からおばあさんが焦った様子で駆け下りてきた。
その後に続けて、他の妖怪たちが駆け下りてくる。
神代 あかり
あの…っ、鬼幽矢が背中に刺さってて
柳婆
あれまあ!早く手当てをしないとねえ
柳婆
かなめ運ぶのを手伝っとくれ!
諏訪 要
分かりました
妖怪たちの間を掻き分けるようにして階段を下りてきたセンター分けをした茶色の髪に金眼の青年がこちらに近づいて来た。

その要と呼ばれる青年は鬼幽ではなく私の手を取り、
諏訪 要
貴方のように可愛らしい女性に出会ったのは初めてです。
諏訪 要
どうか僕と夫婦めおとになってくれませんか?
神代 あかり
……え?

え、夫婦?結婚してってこと?あれ?この人と私、初対面だよね?てか、今この状況で言う?!
あかりはあまりに唐突な出来事に驚きを隠せなかった、困惑してその場で固まっていると
柳婆
今は、そんなことやっとる場合じゃないじゃろうがーーー!

おばあさんが声を張り上げ、要の頬を平手打ちした。乾いた音が森中に響き渡る。
諏訪 要
痛…っ!
柳婆
早う、鬼幽を運ばんかい!
諏訪 要
はあ………
要は大きなため息をついたあと、私に背負われている鬼幽の腕を自分の左肩にまわし、空いている右手で鬼幽の腰を支えるようにして階段を登って行った。
柳婆
お嬢ちゃん陽火と陰火から事情は聞いたよ、ここまで鬼幽を運んでくれてありがとうねえ
神代 あかり
あの…!鬼幽は大丈夫なんですか!?
柳婆
大丈夫、あの子は妖怪だよ。あれぐらいでくたばったりしないさ
おばあさんは、そう言うが私は不安で俯いた。
柳婆
お嬢ちゃんも、危ないから早くお家に帰んなさい
神代 あかり
(この声どこかで……)
そうだ、この声白巖山の入り口を教えてくれたおばあさんの声にそっくりだ。
神代 あかり
おばあさんもしかして…
────次、顔を上げた時おばあさんや妖怪たちはいなくなっていた。
     *


これは、私が鬼幽から後で聞いた話だ
柳婆
鬼幽傷の具合はどうだい?
鬼幽は突き刺さっていた矢を抜いた後、布団の上に寝かされていた。

他の者は、囲炉裏の周りを囲むようにして座っている。
鬼幽
だいぶ良くなったよ、ありがとう
諏訪 要
僕たちより、あの可愛い子にお礼を言うべきですよ
諏訪 要
鬼幽のこと背負って運んで来たんですから
鬼幽
ああ……分かってる
しばらく、鬼幽に刺さっていた矢を囲炉裏の火で照らしながら見ていた山爺やまじじいが口を開いた。
山爺
お前たち、この矢を見てどう思う?
諏訪 要
矢から妖力と微かに霊力を感じます、おそらくその矢は元は巫女が使う破魔はまの矢だったんでしょう
諏訪 要
その矢のやじりに逆五芒星を刻み、弓を射った
諏訪 要
……惨いですね、妖怪にとってこれは相当こたえるでしょう
山爺
そうじゃのう鬼幽じゃなければ死んでいたかもしれぬ
山爺
弓を射る時気配を悟らせないあたり相当な手練じゃろうしな
山爺
皆、これから気を引き締めて生活するように。


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