音もなく吐き続けた息を止め、体と弓が一体になる、その時を待った。
少しして、自然と離れた矢が空気を切り裂き、タン、という音を立てて的の真ん中に中った。
その瞬間、静かな緊張感に包まれていた空間に歓声が巻き起こった。
私は、昔弓を引くのが得意で、当時は「天才」「神童」「百射百中の少女」だとか色んなことを言われてた。
でも、今の私はーー。
今回大会に出場できる女子の人数は5人、うちの弓道部で活動をしている女子はその倍以上いる。
しかも、全員私より的中率は高いはず
なのになんで私なんだろう。
大会に出場してほしいのは、今の私じゃなくて昔の天才と呼ばれた私。
でもね先生。今の私は、昔みたいな「奇跡の一射」って呼ばれた矢は
松村先生は、コーヒーが入ったカップを片手に持ちながら
と言った。私はその言葉に対しては何も返さず一礼をして職員室を出た。
*
学校が終わり、家が反対方向にある私と百合香はいつも通り校門のところで別れようとしていた。
また、その話かと私はため息をついた。
百合香は、私の話を信じていないのか口元を緩ませながら疑うような目で私を見てくる。
私はその態度に少しむっとして
百合香の表情を真似しながらこう言ってみた。
私は冗談のつもりで言ったのだが、百合香はその言葉に驚いたかのように固まってしまった。
私と百合香の間にしばらく沈黙が続く
そんな時、百合香が今まで我慢していたものを吹き出すようにお腹を押さえながら大口をあけて笑い出した。
*
自宅の近くまで来ると家の表札を、ジッと見つめる青紫色の髪にチャイナ服を着た女の子が立っていた。
知り合いかと思ってしばらく様子を見ていたがその女の子に見覚えはない。
私の視線に気づいたのか、女の子がこっちを向いて赤色の瞳と目が合った。
女の子は、腕を組みながら私の体を上から下まで品定めをするようにしげしげと見てくる。
その女性独特の敵視するような視線に、私は不快感を感じた。
女の子が、何かを言いかけた時今私がいちばん聞きたかった声が聞こえてきた。
柔らかくて低い声。
その声が呼んだ名前は私のじゃなくて、別の女の子の名前だったけど












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。