セフレと別れた後、あなたが居ることを少し期待しながら家に帰った。
玄関を開けると期待とは違いとても静かだった。
まるで何かを物語るかのように…。
リビングに行くと机の上にはサイン済みの離婚届とあなたからの手紙。そして指輪が置いてあった。
~手紙~
銀太へ
ごめんなさい。
銀太の事、信じようと思ったけどもう無理でした。
今までありがとう。 銀太と過ごした毎日は本当に
楽しかったし幸せでした。
何も話し合わずこんな形でごめんね。
仕事の時は普通に出来るといいな。
でも銀太が嫌だったら辞めるから遠慮なく言ってね。
お腹の子も産んで育てるつもりです。
銀太に迷惑はかけないから安心して。
本当にごめんなさい。
俺は言葉が出なかった。
手紙を置き寝室へ行くとあなたの服などは全て無くなっていた。
脇の所にでも行ったのだろうか。
仕方ないはずなのになんでこんな苦しいんだよ…。
この日は電話する勇気が出ず翌朝、早い時間に電話することにした。
朝、いつもより早く目が覚めたので顔などを洗った後ケータイを手にした。
もし出てくれなかったらどうしよう。
逆に出たら何を言えばいいのだろう。考えも纏まってない中、俺はあなたに電話をかけた。
プルルル
少し待って寝ぼけた声で電話に出てくれた。
脇の声がすぐに聞こえ俺の心は更に痛んだ。
一緒に活動したいってのは事実だけど本当は少しでもあなたと長い時間居たいだけなんだよ…。
脇からの報告に俺は驚きを隠せなかった。
あんなことしなければ今頃、一緒に名前考えたりしてたんだろうなと思うと苦しかった。
強がってるけど多分俺の声、震えてるだろうな…。
脇になら安心してあなたの事、任せられる。
だけどやっぱり苦しいよ…。
普通に接すること出来るのかな。
子供産まれたらどんな顔すればいいんだ。
俺はそんな事ばかり考えていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!