1年前。
俺はふつーに部活帰りだった。
周りが暗くて街灯を頼りに歩いてたら
曲がり角の死角から人が飛び出して来た。
⁇?「……やっと、捕まえた…。」
見たら同じ制服を着てるけど知らん女の子やった。
???「嘘…。忘れちゃったの?
毎日手紙でお話ししてるでしょう?」
その日より1ヶ月くらい前から
俺の机には毎朝、知らん筆跡の付箋が入ってた。
いつも紙の隅から隅までギチギチに
文字が敷き詰められていて、
どこか恐怖感を募らせるような物だった。
???「…思い出してくれた?ふふ…。アレ、私。」
どこか俺を見る目が虚ろなこの子は怖かった。
この子は俺の、ストーカー…。
俺がそのストーカーを退かして帰ろうとしたら
思いの外力が強くて、驚いてる間に押し倒される。
???「…どうしてそんなこと言うの?
私達の仲じゃない。ねえどうして?
どうして?どウして、どうしテ……。」
ブツブツ呟き出して薄気味悪い。
するとストーカーはカッターを出した。
???「ネぇ。一緒ニ死のう?ね、良イでしョう?」
退けようにも体重を全て乗せられていて敵わない。
ストーカーがカッターを振り上げて
ほんとにこのまま死ぬんかな…と諦めてたとこに
???「イッタ!………。」
見ると暗闇の中に金髪を靡かせるギャルが
ストーカーを蹴り飛ばしたみたいだった。
音の大きさ等から結構な強さで
蹴り飛ばしたみたいでストーカーは失神していた。
聞こえて来た声は見た目に反して穏やかで。
差し出された色白の細い手を握って
何とか立ち上がる。
俺は慌ててお礼をしよーと頭を下げると
ギャルさんは俺の肘を見て言った。
見ると押し倒された時に擦ったのか血が出ていた。
ギャルさんは素早くポーチから
絆創膏を取り出し、怪我した部分に貼ってくれる。
お礼を言うとすぐに身を翻して
行ってしまいそうになったので引き止める。
気付いたら聞いていた。
これから会うかどうかすら分かんないのに。
「内緒」のポーズで口に指を当て
微笑むと、去って行った。
俺の心臓はバクバクしたままだった。
俺は絆創膏を貼ってくれた優しい手、
さっきのギャルには見えない天使の微笑みと
声を思い出しながら帰った。
ストーカーは次の日からいなくなった。
この日は謎のお互い深〜い恋バナをして帰った。
恋において味方が出来るのは何より。
久し振りにセンパイが助けてくれた日のことを
思い出しながら帰った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。