第8話

s I 2。
646
2020/04/24 12:01
1年前。

俺はふつーに部活帰りだった。

周りが暗くて街灯を頼りに歩いてたら

曲がり角の死角から人が飛び出して来た。

⁇?「……やっと、捕まえた…。」
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
は?誰…?
見たら同じ制服を着てるけど知らん女の子やった。

???「嘘…。忘れちゃったの?
   毎日手紙でお話ししてるでしょう?」
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
え?……ぁ。
その日より1ヶ月くらい前から

俺の机には毎朝、知らん筆跡の付箋が入ってた。

いつも紙の隅から隅までギチギチに

文字が敷き詰められていて、

どこか恐怖感を募らせるような物だった。

???「…思い出してくれた?ふふ…。アレ、私。」

どこか俺を見る目が虚ろなこの子は怖かった。

この子は俺の、ストーカー…。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
何でもいーけど帰らしてくれへん?
俺、疲れててん。
俺がそのストーカーを退かして帰ろうとしたら

思いの外力が強くて、驚いてる間に押し倒される。

???「…どうしてそんなこと言うの?
   私達の仲じゃない。ねえどうして?
   どうして?どウして、どうしテ……。」

ブツブツ呟き出して薄気味悪い。

するとストーカーはカッターを出した。

???「ネぇ。一緒ニ死のう?ね、良イでしョう?」
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
…っ。何でそーなんねん……。
離してくれや…。
退けようにも体重を全て乗せられていて敵わない。

ストーカーがカッターを振り上げて

ほんとにこのまま死ぬんかな…と諦めてたとこに
(なまえ)
あなた
…オラッ!
???「イッタ!………。」
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
へ……?
見ると暗闇の中に金髪を靡かせるギャルが

ストーカーを蹴り飛ばしたみたいだった。

音の大きさ等から結構な強さで

蹴り飛ばしたみたいでストーカーは失神していた。
(なまえ)
あなた
……大丈夫?
聞こえて来た声は見た目に反して穏やかで。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
え、あ……。
(なまえ)
あなた
ほら。立てる?
差し出された色白の細い手を握って

何とか立ち上がる。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
あ、あのありがとうござ……
(なまえ)
あなた
…!……怪我、してる。待って。
俺は慌ててお礼をしよーと頭を下げると

ギャルさんは俺の肘を見て言った。

見ると押し倒された時に擦ったのか血が出ていた。
(なまえ)
あなた
……これでよし。
ギャルさんは素早くポーチから

絆創膏を取り出し、怪我した部分に貼ってくれる。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
…何から何まで
ありがとう、ございました…‥。
(なまえ)
あなた
いーえ。こんくらいどってことないし。
ストーカーには気をつけなよ
……イケメン君。
お礼を言うとすぐに身を翻して

行ってしまいそうになったので引き止める。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
あの…!……名前、
聞いても…いいですか?
気付いたら聞いていた。

これから会うかどうかすら分かんないのに。
(なまえ)
あなた
紫薔薇あなた。キミと同じ学校の2年。
あ。このこと学校では、内緒ね。
先生に怒られちゃうから。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
……はい!
「内緒」のポーズで口に指を当て

微笑むと、去って行った。

俺の心臓はバクバクしたままだった。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
紫薔薇、あなた…。
俺は絆創膏を貼ってくれた優しい手、

さっきのギャルには見えない天使の微笑みと

声を思い出しながら帰った。

ストーカーは次の日からいなくなった。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
……んで、今そのあなたセンパイを
追いかけ中って感じやな!
うらたぬき
うらたぬき
…へぇ、そーなんだ。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
俺もうらさんの恋を応援するんやから
うらさんも俺の恋、応援してな!
うらたぬき
うらたぬき
お、おう。
この日は謎のお互い深〜い恋バナをして帰った。

恋において味方が出来るのは何より。

久し振りにセンパイが助けてくれた日のことを

思い出しながら帰った。

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