修学旅行の帰りのバスは
皆よくあることだが、爆睡している。
そんな中私は1人考え事をしていた。
うらた君と"彼"は同一人物なのか。
ってことは過去に私とうらた君は面識があった…?
それにうらた君へのこの気持ちは何なのか。
バスの揺れに茶髪が波打ち、
静かな寝息を立てている彼。
今抱いているモヤモヤはうらた君といれば
何かしら変わるかもしれない。
そのためにはどうやって一緒にいるかだけど…
急にうらた君の頭が私の肩に乗った。
動揺したが直前の急な坂によるバスの揺れで
起こった事故的なものだと理解した。
その証拠に彼は寝息を立てたまま。
バスが揺れる度にサラサラの茶髪が私の首に当たる。
穏やかになったバスの揺れとは対照的に
私の胸は激しく波打っていた。
丸1日の休みを経て学校へ行く。
今日は坂田君に用事があり、
いつも通り予習の道具を持って早めに登校した。
数日ぶりに聞いたかなり声量のある彼の
ほぼ叫んでるに近い私を呼ぶ声。
心なしか少しパワーアップしてる気が…?
ちょーだい!と手を前に出す仕草をして
あざとくなく、尚且つ可愛い男子高校生なんて
坂田君くらいじゃなかろうか。
坂田君は赤のイメージが強いので赤ベースのタオル。
ロゴや柄に、彼からよく聞くうらた君含む
仲の良い4人組の色が入ったものを選んだ。
喜ぶ坂田君を眺めてるのは個人的に
犬を微笑ましく見るよーな感じで
のほほんとして癒されるので忘れかけていた。
お土産ともう1つの本来の目的を。
今まで断り続けてきたマネになる話。
うらた君との距離を縮めて
真相を探る為にはこれが最適だ。
坂田君を利用してるみたくなって申し訳ないが、
マネとしての仕事をこなせば
少しは返せるものもあるだろう。
まだ入ってもないのに浮かれる
坂田君を見ると罪悪感も増してくが、
彼との部活も楽しそーだと切り替える。
走り書き、でも思ったより綺麗な字で書いてくれた。
もう1人分はうらた君に頼むか。
坂田君に書いてもらった提出書類を
ファイルに仕舞うと、時間になって彼は帰った。
相変わらず風のように去るもんだ。
それからうらた君にも署名してもらって
私は晴れてバスケ部のマネージャーに就任した。
そしてこの決断は私を大きく変えることになる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。