悲しかった。
キミが急に俺の目の前からいなくなったから。
やっぱり"この気持ち"は
俺だけだったんだと思ったから。
それでも諦めの悪い俺はキミを追いかけた。
やっと、見つけた____
俺はうらたぬき。
身長がコンプレックスの
そこそこ真面目な高校3年生。
高3と言う大事な時期に俺は転校した。
ある目的のため。
軽い自己紹介をするとクラスは歓迎ムード。
拍手をするクラスメイトの顔を見回す。
俺は"ある人"を探してこの学校に転校してきた。
ザッと見ただけではその人を見つけられなかった。
担任「うらた君は紫薔薇さんの隣ね。」
紫薔薇…⁉︎
紫薔薇なんてそう滅多にいる苗字ではない。
担任に言われた席に行くといたのはギャルだった。
ギャルは基本的に嫌い、と言うか苦手だ。
このギャルが、俺の探していた"あなた"……?
挨拶すると素っ気なく返される。
一瞬あった目は覚えがあった。
確かに、あなただ………。
正直大分動揺してるけど、平静を保つ。
今、俺の目の前にいるギャルは
紛れもなく俺の探していたあなただった。
あなたは間違えても
ギャルになるような人じゃなかった。
でも近くで見れば見る程あなただと分かる。
それにあなたは俺を見ても気付かない。
どう考えても可笑しいけど、
この時はあまり気に留めなかった。
授業が始まってあなたに教科書を見せてもらう。
彼女は少し見せるのを躊躇った。
しかし見せてくれた教科書には
綺麗な字で分かりやすく書き込みがされていた。
この字は、あなたの字だ……。
中学の時によく見せてもらったノートの記憶が蘇る。
恥ずかしそうに俺を見やる目も顔も
濃いめのギャルメイクが施されてはいるが、
俺のよく知るあなただった。
ガッツリ俺の目、顔を見て、声も聴いたはず。
なのにあなたは俺に気付かない。
まるで初めて会ったみたいな反応。
それでも俺はあなたに何度も何度も話しかけた。
少しでも俺を見て欲しくて。
全て華麗に躱されても、
俺は諦めようと思えなかった。
俺はクラスで交友関係を広げる傍ら
バスケ部に入部した。
3年からなんて大分迷惑な話だけどな。
受験生でも入りたくなるくらい
俺はバスケ、部活が好きだった。
顧問「と言う訳だ。皆よろしく頼む。」
部員「「「「「はい!」」」」」
部員の揃った返事が部室に響く。
この学校のバスケ部は練習量が多くないのに
強いことで有名だ。
つまりそれだけ一回一回がキツイと言うこと。
何もかもテキトーで弱いとこより
キツくても強い方がやりがいがあるってもんだ。
部活終わり、汗を拭く俺に
関西弁で赤髪の奴が話しかけて来た。
部活で初めて友達が出来るかもと喜んで返事する。
やっぱ部活には仲間であり親友、的な
存在が必要だよな!
帰り道、歩きながら話す。
少しの間話しただけで分かる人懐っこさ。
コイツは人に好かれるタイプだなぁ。
ん?2年?
コイツ……年下じゃねーか!
笑顔で差し出された手を仕方なく握る。
…コイツの性格には負けるわ。
これが俺と坂田の最初の出会い。
こん時はまさかこの天然で犬みたいな後輩が
相棒であり恋のライバルになるとは
思いもしなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!