第30話

s I 6。
379
2020/08/30 06:01
1週間経っても体育館での2人の姿が頭から離れない。

俺の親友(先輩)と好きな人…。

なあ、うらさん。

何で教えてくれんかったや。

うらさんの好きな人も……あなたセンパイやって。

教えてくれたなら俺だって………。


複雑に絡まる心境の中、

俺はふと冷静になって思った。

あの状況と言葉から間違いなく

前にうらさんから聞いた"好きな人"って言うのは

あなたセンパイだろう。

ってことは。


うらさんと仲良くなった日に話したもらった恋バナ。

それからしばらくして、

恋の進捗状況を一度だけ聞いたことがある。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
うらさんうらさん!
例の好きな子とは
今どーなってんの⁉︎
うらたぬき
うらたぬき
また俺に恋バナ
吐かせるつもりか、坂田。
……微妙だよ。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
微妙って何やねん!
うらたぬき
うらたぬき
……彼女、俺のこと
覚えてないみたいなんだ。
記憶喪失らしくて…。
虐待もされてたみたいだし…。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
え、あ……。
この時の俺はハイテンションめに話してたから

うらさんがかなり落ち込んでて

申し訳なくなったのを覚えてる。


この話が事実なら。

あなたセンパイはうらさんと同じ中学にいて

記憶喪失して、親に虐待されていた…。

あのあなたセンパイが……?

信じられない。

あんなに強いのに。

でももしそれも護身用、

虐待された過去から来たものだとしたら。

それにうらさんから聞いた話じゃ

元々真面目な優等生だったらしいし。


あなたセンパイ…。

俺はセンパイのこと、何も知らなかったんやな。

なのに知った気になって……俺が1番

センパイを理解してるんやって思ってた。
あほの/となりの坂田。
あほの/となりの坂田。
俺は…2人の先輩の………
何を見てたんや……。
でもここまで来たらくじけてちゃダメだ。

あなたセンパイの過去をちゃんと、

センパイのことをちゃんと知りたい。

それにうらさんとも話さなきゃ。

モヤモヤしてても先は見えないんだ。


ソファに身を投げていた体勢から

しっかり地面に足をつけて立ち上がり、

窓越しに沈みかけた太陽を見た。

俺は逃げない。

前を向いてぶつかってやる!

プリ小説オーディオドラマ