1週間経っても体育館での2人の姿が頭から離れない。
俺の親友(先輩)と好きな人…。
なあ、うらさん。
何で教えてくれんかったや。
うらさんの好きな人も……あなたセンパイやって。
教えてくれたなら俺だって………。
複雑に絡まる心境の中、
俺はふと冷静になって思った。
あの状況と言葉から間違いなく
前にうらさんから聞いた"好きな人"って言うのは
あなたセンパイだろう。
ってことは。
うらさんと仲良くなった日に話したもらった恋バナ。
それからしばらくして、
恋の進捗状況を一度だけ聞いたことがある。
この時の俺はハイテンションめに話してたから
うらさんがかなり落ち込んでて
申し訳なくなったのを覚えてる。
この話が事実なら。
あなたセンパイはうらさんと同じ中学にいて
記憶喪失して、親に虐待されていた…。
あのあなたセンパイが……?
信じられない。
あんなに強いのに。
でももしそれも護身用、
虐待された過去から来たものだとしたら。
それにうらさんから聞いた話じゃ
元々真面目な優等生だったらしいし。
あなたセンパイ…。
俺はセンパイのこと、何も知らなかったんやな。
なのに知った気になって……俺が1番
センパイを理解してるんやって思ってた。
でもここまで来たらくじけてちゃダメだ。
あなたセンパイの過去をちゃんと、
センパイのことをちゃんと知りたい。
それにうらさんとも話さなきゃ。
モヤモヤしてても先は見えないんだ。
ソファに身を投げていた体勢から
しっかり地面に足をつけて立ち上がり、
窓越しに沈みかけた太陽を見た。
俺は逃げない。
前を向いてぶつかってやる!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。