目黒side
いつものようにあいさつをして楽屋に入れば、
愛しい人の声が聞こえる。
荷物を置いて、ソファに座ってクイズアプリをしている彼の隣へ座った。
アプリを覗いてみたけど、俺にはさっぱりわからない。
けれど彼はすらすらと解いていて「やっぱすごいなー」と思っていると、彼の動きが急に止まった。
突然話しかけてきたかと思うと、眉尻を下げてなにやら不安そうにしている。
え、もしかしてそれだけ?
あんなに不安そうな顔をするから、俺が何かしたのかと思った…。
なんだろう、なぜこんなに疑り深いのだ。
ただ、香水を変えただけ……
そこで俺は、あることに気が付いた。
顔を真っ赤にして否定する。相変わらず嘘が下手だなぁ…
そう言って笑うと、彼は「だって…」と口を開いた。
頬をプク、と膨らませてプンスカと怒る。
俺は、あざとくていろんな人に愛想を振りまくあなたの方が心配なんですけどね。
なんて思っているとまた突然、袖をきゅ、と掴まれ、その方を見れば、彼が上目遣いでこちらを見ていた。
そう言われると、腰の当たりがずん、と重くなった気がする。
できることなら今すぐにでも襲いたいものだが、その気持ちをグッ、と抑えていつものように振る舞う。
俺はニヤ、と笑って告げる。
俺に対抗するように、彼もニヤリと笑った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。