“ドンッ”
『わっ…』
佐野「あ!ごめんなさい…ってあなたやん!」
『晶哉?』
事務所の曲がり角でぶつかったのはAぇさんの晶哉。
結構勢いよく衝突して尻もちついてもうた。
『ごめん大丈夫?』
佐野「いやあなたコケてるし俺がごめん。立てる?」
差し出された手を取る。
軽々と引っ張って立たせてくれた。
『ありがとう』
佐野「なぁ、あなたこの後は?」
『ちょっと時間空いて仕事』
佐野「じゃあちょっとだけ来てくれへん?」
『いいけど…どうしたん?』
佐野「うーん…」
なぜか微妙な反応をした晶哉は個室っぽくなっている所について止まる。
椅子に座ると話し始めた。
佐野「ここ人目ないやん?」
『え?まぁそうやな』
佐野「こんな簡単に付いてったら危ないで?」
『なんで?だって晶哉やん』
佐野「…そうやんなぁ」
『ん?』
佐野「…あなたは長尾くんのどこが好きなん?」
『うーん、どことかやなくて…長尾謙杜が好き』
佐野「ははっ、完敗や」
『ん?なにが?』
佐野「なんでもない…長尾くんのこと大事にしや?じゃあまた!」
『あ、うん。仕事頑張って!』
佐野「あなたもな〜」
なんだったのかよく分からへんけど…
最後の晶哉の笑顔がいつも通りなようでちょっとだけぎこちなかった気がした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!