にへりと思わず上がった口角を慌てて戻す。
一週間前のあの出来事がなんだかまだ夢みたいだ。
現実のてるさんと少し仲良くなれたんじゃないかな。
結局、あの後のイベントは大盛況。
声優さんのトークショーや、大きなイベントの告知には大興奮してしまった。
てるさんは、思ってた通り優しくていい人で、イケメンさんだったなぁ。
にこにこと余韻にどっぷり浸る。
そんな私の視線の先にあるスマホには、てるさんからのお誘いが再び届いていた。
もういまの私に断る理由などなかった。
だって、あんなに楽しかったのだから。
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気が付いたら、ゲームに関係ないことでもてるさんと会う日が増えた。
最初のころにあった不安とかもすっかりなくなってリアルでも打ち解けていった。
でも、最近はまた違うことで悩んでしまっている。
それは、てるさんにドキドキしてしまうということ。
会うたびに、服装を褒めてくれて可愛いと言ってくれたり。
さりげなく車道側を歩いてくれたり。
絶対、先に待ち合わせの場所に着いていて、私が待たされたことなんて一度もなかったりとか。
あげだしたらきりがない。
最初は、お世辞とかただ気を使ってくれているだけなのかと思ってた。
だけど、てるさんは、何度も会った今でもそれを続けてくれている。
今日も当然のように、待ち合わせ場所で私を待っていて敵わないなと思った。
思わずこぼれた一言に慌てて口をふさぐ。
つい気になって失礼なことを直球に聞いてしまった。
てるさんは、そうきっぱり言ってにっこり笑った。
ぽんぽんと大きな手が私の頭を撫でる。
こんなの、好きになっちゃうってば。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。