てるさんおすすめだというケーキ屋さんでの休憩中。
やっぱりおすすめというだけあってかなりおいしい。
てるさんと二人きりにもすっかり慣れて、心地良い空気。
てるさんがぽつりと言い出したその一言に、私はぴしりと固まる。
な、なに次のステップって。
知り合いの次のこと? それとも友達の次?
ま、まさか恋人……に?
もしかして私がてるさんのことちょっと意識してんのばれちゃった、とか?
てるさんの方が年上だし、遊びで付き合ってやるよってことなの?
私が顔を熱くしてぐるぐる悩んでいたのに、てるさんはあっさりと次のステップの答えを言った。
言われてることがいまいちよくわからなくて、頭の中がはてなでいっぱいになる。
対面の椅子に座っている、てるさんの両手が伸びてきてむにゅりと顔を挟まれる。
触れてきた手の熱に心臓の鼓動が早まる。
このままでは顔が赤くなってしまいそうで止めに入るが、顔がつぶされているせいでうまく喋れない。
笑いながらやっと、てるさんが手を放してくれた。
にっこりとてるさんは笑った。
さらりと告げられたほんとの名前に、とくりと心臓が大きく揺れる。
てるさんは、風馬さんって言うんだ……。
不思議と嫌な感じはなかったし、抵抗も少なかった。
なんでだろう、てるさんだからかな。
この人ならいいかなって思った。
あめって呼ばれてる時は緊張なんてあんまりしなかったのに。
てるさんの口から飛び出た自分のほんとの名前に、ついつい胸がきゅうと音を立てた。
へへっといたずらっ子のように、てるさんは笑った。
よしよしと頭を撫でてきた風馬さんに、もう私は完敗だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。