第6話

第六話 ほんとを教えていいんですか?
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2020/08/31 05:00
てる
てる
ねぇ、あめちゃん
あめ
あめ
なんですか、てるさん
てるさんおすすめだというケーキ屋さんでの休憩中。
やっぱりおすすめというだけあってかなりおいしい。
てるさんと二人きりにもすっかり慣れて、心地良い空気。
てる
てる
おれたちさぁ、そろそろ次のステップへ進んでもいいと思うんだよね
あめ
あめ
え?
てるさんがぽつりと言い出したその一言に、私はぴしりと固まる。
な、なに次のステップって。
知り合いの次のこと? それとも友達の次?
ま、まさか恋人……に?
てる
てる
どうかな?
あめ
あめ
い、いやいやっ、私たちにはまだっ
もしかして私がてるさんのことちょっと意識してんのばれちゃった、とか?
てる
てる
そう? もうおれはいいと思うんだよね
てるさんの方が年上だし、遊びで付き合ってやるよってことなの?
てる
てる
ほんとの名前、教えても
あめ
あめ
ん? なんて言いました、てるさん
私が顔を熱くしてぐるぐる悩んでいたのに、てるさんはあっさりと次のステップの答えを言った。
てる
てる
いやぁ、そろそろてるさんっていうのやめようよって話
あめ
あめ
??
言われてることがいまいちよくわからなくて、頭の中がはてなでいっぱいになる。
てる
てる
あはは、わかんないって顔してる
対面の椅子に座っている、てるさんの両手が伸びてきてむにゅりと顔を挟まれる。
触れてきた手の熱に心臓の鼓動が早まる。
あめ
あめ
ぬぁにしゅりゅんでふか
このままでは顔が赤くなってしまいそうで止めに入るが、顔がつぶされているせいでうまく喋れない。
てる
てる
ごめん、ごめん
笑いながらやっと、てるさんが手を放してくれた。
あめ
あめ
もー何するんですか! てるさん!!
てる
てる
てるさんじゃないよ
あめ
あめ
え……?
てる
てる
てるさんじゃなくて、風馬
にっこりとてるさんは笑った。
あめ
あめ
ふうま……さん?
風馬
風馬
そう、風馬。よろしくね?
さらりと告げられたほんとの名前に、とくりと心臓が大きく揺れる。
てるさんは、風馬さんって言うんだ……。
風馬
風馬
あめちゃんは? 嫌じゃなければ教えてよ
(なまえ)
あなた
……えっと私は、あなたって言います
不思議と嫌な感じはなかったし、抵抗も少なかった。
なんでだろう、てるさんだからかな。
この人ならいいかなって思った。
風馬
風馬
あなたちゃん?
(なまえ)
あなた
は、はい
あめって呼ばれてる時は緊張なんてあんまりしなかったのに。
てるさんの口から飛び出た自分のほんとの名前に、ついつい胸がきゅうと音を立てた。
風馬
風馬
あなたちゃん
(なまえ)
あなた
……はい
風馬
風馬
あなたちゃん
(なまえ)
あなた
なんですかもう
風馬
風馬
呼んでみただけ
へへっといたずらっ子のように、てるさんは笑った。
(なまえ)
あなた
もう意地悪しないでくださいよ、てるさん!!
風馬
風馬
てるさん? 違うでしょ?
(なまえ)
あなた
ふ、ふうまさん……
風馬
風馬
よくできました
よしよしと頭を撫でてきた風馬さんに、もう私は完敗だった。

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