くうと伸びをして、握っていたスマホを机に置く。
最近はてるさんとばかりやっていたこのゲームだが、今日はたまたま予定が合わず、久しぶりのソロプレイ。
一人でやるのも楽しいけど、やっぱりてるさんとやる方がいいなぁ。なんて。
ぴこん。
机の上のスマホが音を立てる。
もしかして、てるさんから連絡来たとか……?
期待に胸を躍らせながら、スマホを手に取った。
ってことは、知らない人からのやつか。
普段なら開かずに無視しちゃうけれど。
今日はなんとなく開いてみてしまった。
それが悪かったのだと思う。
その一文から始まったメッセージ。
画面に映るのは信じられないような内容だった。
私への罵倒や暴言が続き、見なかったことにしようと画面を閉じかけた時。
ぴこん。
連投されるメッセージ。
何言ってるんだろうこの人。てるさんはそんなこと言わないと思うんだけど。
えっデート? てるさんはこの人とデートしたってこと?
じゃあ私よりてるさんと深い関係なの……?
嘘だ、と思っていたことが急に現実味を帯びる。
信じられない、信じたくない。
でも、完全に気にしないなんてことはできなかった。
てるさんは、風馬さんは私のことどうでも、いいのか。
なんとなくわかるような気がした。
だって、地味でつまらない私とイケメンでかっこよくて優しい風馬さんが釣り合うはずなんてなかったのだから。
少し仲良くなれたかなとは思ってたけど。
夢を見ていたのかもしれない。
てるさんが優しくて甘くて。
遊ばれてるのだとしてもそれでいいかもなんて思ってたりした。
自分で想像していたことと、いざそれを他人から教えられるのでは、心のダメージが全然違う。
言葉と事実の刃が深く私をえぐる。
追い打ちをかけてくるメッセージ。
じわりと目の前が滲んだ。
頬を伝う冷たい感覚に自分が泣いているのだとようやく気が付いた。
どうしよう、せっかく大好きで心地よい人だと思ってたのに。
もっとずっと一緒にいたかったのに。
でもそんなの私のエゴでしかないから。
てるさんは優しいからきっと自分から距離を置くなんてことはしないと思う。
だったら私が動かないと。
流れる涙を止めるため、ぐっと強く唇を噛んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。