第8話

第八話 優しいあなたは嘘なのですか?
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2020/09/14 05:00
てる
てる
あめちゃん? おーい、あめちゃん?
あめ
あめ
……
てる
てる
あめちゃん?
あめ
あめ
……
てる
てる
……あなたちゃん?
あめ
あめ
ひゃっ! すいません、てるさん
急に呼ばれた本当の名前にピクリと肩を揺らす。
今日は、せっかくてるさんとゲームをしているのに気が付いたら“あのこと”を考えてしまう。
てる
てる
なぁに、悩みごと?
あめ
あめ
あ、いや、えと
てる
てる
なんでも相談乗るよ? 大丈夫?
確かに悩みごとなのかもしれない。
だって、今はそのことしか考えられないし。
でも、それをまさかてるさん本人に話すなんて……。
「てるさんは私のことどう思ってるんですか?」とか「てるさん、この前女の人と出かけたんですか?」なんて聞けるわけないよ。
あめ
あめ
……なんでも、ないです
てる
てる
えーそう? ぼんやりしてたからさ
あめ
あめ
んーちょっとだけ嫌なことあっただけです、大丈夫ですよ
だから私は無理に笑うしかなかった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
てる
てる
あめちゃん、今日の夜暇かな?
ぴこん、とスマホが音を立てる。
あの日から数日が経った。
いまだにあの日のことはうまく整理できていない。
でも、あのことがほんとならやっぱり、身を引くのが正解なのだと思うから。
胸がつきんと鋭く痛む。
ほんとのような嘘のようなあの一言が、頭の隅にこびりついて離れない。
てるさんが私のことどうでもいいって思ってる。
それも十分ショックだったのだけど、それよりも。
(なまえ)
あなた
てるさんと、デートしたんでしょあの人は
なんて声がこぼれ落ちた。
ってことは恋人……なのかな。
てるさんにお付き合いしている人がいる……。
そっちの方がなんだかすごくショックだった。
そんな風に思う自分がなんだか信じられなくて、ついつい考え込んでしまう。
思い出すのは、親身になって優しく話を聞いてくれる、てるさんのこと。
なんでも相談に乗ってくれて優しくて、かっこいい。
一緒にいると安心して、でもちょっとどきどきして。
(なまえ)
あなた
……私、てるさんのこと好きだったんだ
ようやく飲み込むことのできたその感情はもう手遅れで。
てるさんが私に振り向くなんてことないのに。
どうしよう、余計にこれからてるさんとどう接していいのかわからない。
一緒に遊んでる時、ふとこの気持ちがあふれてしまったらどうしよう。
また会おうって言われたら? どきどきしすぎてもう隠しきれないかもしれない。
(なまえ)
あなた
……
私は、この日初めて、てるさんからの連絡を無視した。

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