前の話
一覧へ
次の話

第1話

第一話 マイナスで終わっていいんですか?
女子生徒1
女子生徒1
あなたさんじゃーねー。私たち、この後彼氏とデートだから
(なまえ)
あなた
え、でもこの量を一人でなんて……
女子生徒1
女子生徒1
そーんなこと言わずにさ、ゴミ捨てよろしく! またねー
ばたんと大きな音を立てて閉まる扉。
まってと声を上げたはずなのにそれはかき消されてしまった。
(なまえ)
あなた
(あーあ、今日もまんまとやられてしまった……)
もう私しか残っていない教室に大きなため息が零れ落ちる。
気弱で他人に逆らえない性格が災いして雑用を押し付けられるのは、もう何度目だろうか。
そのたびに次こそは文句言うんだって思うのになぁ。
きっ、と目の前に並ぶゴミ袋をにらみつける。
無機物になら強気になれるのに。
一人で運ぶにはちょっと重くて多そうだけど、往復するのはなんだかしゃくに触る。
(なまえ)
あなた
このくらいきっと一発でもっていけますよーだっ
むなしく響いた独り言をちょっとしたばねにして両手にひとつずつ、大きな袋を持った。
なんて調子に乗ったのが悪かったんだ。
(なまえ)
あなた
うわぁ!!
机に足を引っかけてバランスを崩した拍子に、手に持ったゴミ袋が空を飛んだ。
舞うほこりに飛び散る紙屑。
もしやこれは、掃除しなおしとかいうやつなのでは。
のしかかる絶望感にじわりと涙が浮かびそうになる。
どうしてこうもついてないんだろうか。
不幸というかドジというかバカというか、なんというか。
元はといえば先に帰ったあの二人が悪い。
そうだそうだ、私は悪くない。
下に向かっていくテンションをどうにか持ち上げようとぐるぐると考え込む。
(なまえ)
あなた
はっくしょん!!
舞うほこりのせいで飛び出た私のくしゃみが心にとどめを刺した。
(なまえ)
あなた
もー! やになっちゃうなぁ……
嫌になるくらい静かな教室が、助けてくれる人なんていないことを教えてくれる。
でも……
ぴこん
(なまえ)
あなた
あっ
間抜けな音がスマホから流れた。
光る画面が告げた通知は、とあるゲームからのもの。
憂鬱ゆううつな日常の中で唯一の楽しみ。
ふと目についた広告から足を踏み入れたその世界は、私を瞬く間に虜にした。
(なまえ)
あなた
今日の夜一緒にできるかな? ……あ、てるさんからだ
下向きだったテンションがくいっと上に向く。
それは楽しくて最高な世界への招待状。
(なまえ)
あなた
よーし頑張っちゃおっかな!
最悪なまんまで一日を終わらせてなるものか。
くいっと一人元気を入れなおして掃除に取り掛かった。
楽しみはお家に帰ってから、だもんね。