深結の好みがとにかく意外だった。
1人暮らしとか言っときながら…
好みはそこらの駆け事に使われてる奴なのかよ。
深結は俺と勝負が出来ることで上機嫌に
なっていると予想しながら、俺は深結に
案内される形でテーブルに向かった。
2つある椅子の1つに座る。
「いや、これはソファーだろ」と思った。
深結の所も大体同じだった。
強いて言うなら、脚じゃない部分が色違いってだけ。
突然不敵な笑みを浮かべては、俺に質問する。
多分、自信があるからこその質問だろう。
深結の威圧感と、気迫に押された。
今ので、この後の勝負の流れは
ほぼ掴めなくなったとも言える。
はっきり分かった。
俺に、最初から勝ち目なんてなかったんだ。
「深結の事を、あまり知らない」のだから。
自分が負けたら俺を帰宅させるという条件を
自ら提示したのに、余裕を見せる深結。
俺にはその意図が分からなかった。
何故そんな事を言ったのか。
そう言うと、深結は物凄い速度で
トランプの山札をシャッフルしてみせる。
年齢と見た目上で言えば、反則並に上手い。
大抵の人はこんな見た目の奴がトランプを
ここまで器用に扱うとは考えられないし、
この速度でこの安定したシャッフルは異常だ。
深結はキメ顔でそう言いきってみせた。
「負けるはずもない」と言わんばかりの
自信満々な表情で、山札をセットした。
…深結…めっちゃ挑発上手すぎだろ。
コツがあるのか知りたい。凄く気になる。
必死になって、自分を奮い立たせるように、
頬を叩いて気合を入れる。
でもそれは、ただ空回りするだけになる。
この勝負を通して、俺は深結が
何故、俺を家に帰すと言えたのかを
理解することになる。
深結には、俺が知る由もない、
もう1つの能力が秘められていたという事だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。