第16話

「魔女」から「薔薇」へ

2019/08/02 13:51

深結 (黒い魔女)

(…まさか私の手刀を真似るなんてね…)

あなた

…ごめん、深結…
「黒い魔女」のお前を見るのは辛いんだ。
だから…俺はこうするしかなかったんだ。

怒りに狂った「黒い魔女」。

それの要因は俺自身だった。
けれども、今の状況としてはむしろ逆。
「黒い魔女」は力尽き、
俺自身はそれを見下ろしている。

そして時は過ぎ、約1時間後。

深結

…くーっ…なんか頭痛い…

「黒い魔女」は「黒い薔薇」へと転換した。
俺の右ストレートが良い感じに入っていたのだろう。

やるべき事を果たした感じがする。

あなた

…深結…気づいたか？

深結

あれ、お兄ちゃん…？
ここで何してんの？

目覚めてきた深結は不思議そうな顔で俺を見る。

あなた

お前が「黒い魔女」になってる間に
色々あったんだよ。
最終的にはこんな風になったけど。

深結

そっか…
「黒い魔女」の事、忘れてね？
…お兄ちゃんを傷付けたくないもん。

あなた

ああ、分かったよ…

この時の俺が言う通り、
この短時間だけでも色々あった。

気が付けば、少しずつ深結に
惚れているような気がした。

あなた

…深結。この今まで、好きって
言えなくて悪かったな。
「黒い魔女」のお前との約束だから。

深結

…うん…ほんと、今更だね。
「黒い魔女」にも
それで怒られたんでしょ？

今更って気づいてんなら最初に怒れよ。
「黒い魔女」にも…ってお前自身じゃねぇか。

あなた

…今更じゃねぇよ。
今だから言える事だってーの。

深結

…あはは、そうなんだ…

あなた

…偽善者ってのは、
意外とその通りかもしれないな。
お前に「好き」って早く伝えてたら、
こんな事にはならなかったんだろうな…
って思うと。

深結

反省するくらいなら早めに言ってよね…
お兄ちゃんのバカ…

この時、深結が言っていた事が
何だったのかは分からなかった。

でも、あの時は伝える状況が存在しなかった。
言うべきタイミングが、分からなかった。



この調子だと、深結が言った「偽善者」から
変われる日は遠そうだな、と俺は感じた。



でも次の日、悪夢は再来することになる。







「黒い薔薇」が、再び目覚めてしまうのだから。