息を荒くして祖父母の家に駆け込んだ俺。
ちょっと心配そうにしていたのか、
祖母の優しい声が返ってきた。
祖母の言う雅美と言うのは、俺の母である。
母は父と離婚したらしく、交通事故に
遭ってしまったと、祖父から聞いたことがある。
「黒い薔薇」の話は都市伝説だ。
恐らくだが、祖母でも信じてくれないだろう。
孤児院を急に抜けてきた事実を言い、頭を下げる。
え?なんだその解釈…
一瞬、思わず俺自身の思考が停止した。
おばあちゃん…変な解釈はやめろって…
思考が停止した俺は、すぐさま出てきた
疑問を祖母に投げかけた。
動じる様子もなく、祖母は疑問に答える。
俺の話を聞いた祖母は、喜んでいた。
どうやら、学校に行かせてくれるらしい。
これなら、「黒い薔薇」とも会わなくなるだろう。
正直、孤児院と学校の差なんて、
歴然としてるのが紛れもない事実だ。
別に、あの孤児院が嫌いという訳ではない。
「黒い薔薇」から、逃げてきただけだから。
祖母の厚い支援を受けたその翌日。
支度を整えて、俺は学校に向かう。
ここから、俺の学校生活が始まる…はずだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!