第4話

第4章
1,885
2019/05/06 09:01
高校の創立記念日。

平日に学校が休みで得した気分。

でもお小遣いには余裕がないから、誰もいない家でのんびり過ごしていた。

ベッドの上でスマホを弄っていると、時間なんてあっという間に過ぎていく。
ユウリ
ユウリ
……あ、お昼ご飯、食べてなかったな……
もうお昼なんかとっくに過ぎていた。
ユウリ
ユウリ
ご飯余ってたから、炒飯でもしようかな
ついでに夜ご飯分のご飯を炊いておこう。

そう考えながら、キッチンへ向かう。


玄関扉の開く音。

ショウタくんが帰って来た。
ユウリ
ユウリ
あ、おかえりなさい!
最近は私も吹っ切れて、どんな反応をされようと自分から挨拶はしようと決めていた。

キッチンから出てきた私の姿をみてぎょっとするショウタくん。
ユウリ
ユウリ
……ああ、今日、うちの学校、創立記念日なんだ
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
……ふうん
気のない返事で横をすり抜ける。

手にはコンビニの袋。

冷蔵庫からペットボトルの水を取り出す。

ふと、フライパンの中の炒飯に目が留まった。
ユウリ
ユウリ
お昼食べそびれちゃって、今作ったところだよ。
よかったら、食べる?
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
……いや、買ってきたから
コンビニ袋からがさがさお弁当を取り出して、レンジに入れている。
ユウリ
ユウリ
……そっか
私も炒飯をお皿に盛り付け、スプーンを用意した。



……会話が続かない。



いつものことだけど、いつも気になっている。

私とはおしゃべりなんて、したくないのかな。

私は、もっとショウタくんのこと、知りたいんだけど。

どんなことに興味があって、何が嫌なのか。


電子レンジの終了音が鳴り響く。


……どうせ自分の部屋で食べるんだろうな。


レンチンしたお弁当を持ってダイニングテーブルに向かう後ろ姿を眺めながら、そんなことを考えていた。


……ダイニング?


ショウタくんは自分の席に座り、手を合わせる。
ユウリ
ユウリ
(ここで食べるんだ!)
私も急いで席に着き、「いただきます」をした。


ふたりでごはん。

ちょっとしたことだけど、受け入れてもらえたようで嬉しい。

ショウタくんはのり弁当をもりもり食べている。

食べる姿に見惚れていたが、沈黙が気になった。
ユウリ
ユウリ
(無言なのも、変だよね……)
何か話題……


ふと、ショウタくんのお箸が止まった。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
……あのさ
ユウリ
ユウリ
はっ、はい!?
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
別に、無理してしゃべろうと思わなくていいから
ユウリ
ユウリ
あ、ええっと……
ばれてる。

気のきいた返しが出来なくて、逆に焦った。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
気い使われんの嫌だし。

俺も、家に居るときまでいろいろ考えたくない
ユウリ
ユウリ
……そっか、そうだよね……
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
ていうか、お前なにビビってんの?
ユウリ
ユウリ
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
……俺に話しかける時だけ、なんか構えてるだろ?
ユウリ
ユウリ
……そうかなあ……
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
親父とか兄貴にはフツーじゃん
ユウリ
ユウリ
そんなつもり、ないんだけど……
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
お前、昔っからそうだったよな。
変に気い使って、みんなから一歩ズレてんの。
トロいっていうか
口の端で意地悪な笑いを浮かべる。


……なんかディスられてる?
ユウリ
ユウリ
……そんな風に思ってたの?私のこと
少しムッとした。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
あの義母ちゃんみてたら、お前がそうなったのもわかる気がするけど
母が決断力と行動力に充ち溢れていることを言っているのだろう。

引っ張ってもらう立場にいることが当たり前になっている私。

……ショウタくん、意外と他人のこと見てるんだな……



空になった容器を片づけながら、ショウタくんは席を立つ。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
今日お前が飯当番だろ。
晩飯なに?
ユウリ
ユウリ
んー、鶏肉のストックがあるから唐揚げでもしようかな……
ていうか今食べたばっかりなのにもう夜ご飯の話?
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
これはおやつだろ。
晩飯は晩飯。
飯出来たら呼んで
スマホを弄りながら自分の部屋に引っ込んでいった。




ひとり残されたダイニング。

さっきまでの会話を反芻する。
ユウリ
ユウリ
……普通に話せた……よね?
嫌われてたんじゃなかったんだ。

それだけじゃない。

私のことをちゃんと気にかけてくれていた。


嬉しさがじわじわと込み上げてくる。

一歩踏み出せた気がして、やる気が湧いてきた。
ユウリ
ユウリ
よし、ご飯の準備しよ!

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