第7話

第7章
1,480
2019/05/27 09:01
その日、郵便受けに入っていた、ショウタくん宛の封筒。

送り主は、聞いたことのある企業だ。


内定通知。


夕食は、その話題でもちきりだった。
お義父さん
ショウタ、おめでとう。
無事に決まってよかったな
お義父さんのお祝いの言葉。
お母さん
おめでとう!本当によかったわ……
上機嫌の母。
大畠  ハヤタ
大畠 ハヤタ
すぐに『辞ーめた 』なんてことにならないようにな
からかうハヤタさん。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
わかってるよ。
ちゃんと働くって
ショウタくんも、嬉しそう。

私も、お祝いの言葉を口にする。
ユウリ
ユウリ
……ショウタくん、おめでとう
ショウタくんは、私の目をまっすぐ見つめる。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
……うん、ありがと
今日の夕食当番は母だ。

ショウタくんの好きなおかずばかりを揃えたとアピールしていた。
お母さん
いっぱい食べてちょうだいね!
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
いただきます
ショウタくんがお箸をつけるのに続いて、みんなも食べ始める。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
……うん、美味い
もりもり食べるショウタくんの様子を、みんななんとなく見守っている感じ。
大畠  ハヤタ
大畠 ハヤタ
勤務地なんかはまだ、だよな?
ハヤタさんの質問に、ショウタくんはご飯を頬張りながらこくこくと頷く。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
……どっちにしろ最初は研修で寮に入るし
大畠  ハヤタ
大畠 ハヤタ
そうなのか、お前、家出て生活出来るのか?
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
なんとかなるだろ
……ショウタくん、ここから出ていっちゃうの?

心がざわついた。


ショウタくんと目が合う。

何か言いたげな眼差しで見つめ返された。
大畠  ハヤタ
大畠 ハヤタ
ユウリちゃん、急いで食べないと全部ショウタに食べられるよ
ハヤタさんの呼び掛けにハッとする。
大畠  ハヤタ
大畠 ハヤタ
ほら、エビチリ最後だけど食べる?
ユウリ
ユウリ
あ、うん、ありがとう
さっきの眼差しはなんだったのか。


ハヤタさんからエビチリを受け取り、ちらりとショウタくんを窺う。
大畠 ショウタ
大畠 ショウタ
おかわり
何事もなかったかのようにご飯を食べ続けるショウタくん。

もう目が合うことはなかった。



食後の片づけをしていると、母がふと呟いた。
お母さん
ショウタくんがいなくなると、寂しくなっちゃうわねえ……
せっかく仲良くなれてきたのに
ユウリ
ユウリ
……そうだね……
しみじみ同意する。


いつの間にか、自分がこの家の生活に溶け込んできていたことを自覚する。

最初は無愛想でマイペースだと思っていたショウタくん。

でも実はちゃんと他人のことを見ていて、伝えるべきことははっきり言ってくれる。

自分をしっかり持っているところに、私は惹かれていた。

ショウタくんが就職して、一人立ちをする。

……血の繋がりすらない私とは、もう関わることはないのかもしれない。

現実味を帯びてじわじわと私の胸の中に広がる寂しさを、もて余していた。

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