その日、郵便受けに入っていた、ショウタくん宛の封筒。
送り主は、聞いたことのある企業だ。
内定通知。
夕食は、その話題でもちきりだった。
お義父さんのお祝いの言葉。
上機嫌の母。
からかうハヤタさん。
ショウタくんも、嬉しそう。
私も、お祝いの言葉を口にする。
ショウタくんは、私の目をまっすぐ見つめる。
今日の夕食当番は母だ。
ショウタくんの好きなおかずばかりを揃えたとアピールしていた。
ショウタくんがお箸をつけるのに続いて、みんなも食べ始める。
もりもり食べるショウタくんの様子を、みんななんとなく見守っている感じ。
ハヤタさんの質問に、ショウタくんはご飯を頬張りながらこくこくと頷く。
……ショウタくん、ここから出ていっちゃうの?
心がざわついた。
ショウタくんと目が合う。
何か言いたげな眼差しで見つめ返された。
ハヤタさんの呼び掛けにハッとする。
さっきの眼差しはなんだったのか。
ハヤタさんからエビチリを受け取り、ちらりとショウタくんを窺う。
何事もなかったかのようにご飯を食べ続けるショウタくん。
もう目が合うことはなかった。
食後の片づけをしていると、母がふと呟いた。
しみじみ同意する。
いつの間にか、自分がこの家の生活に溶け込んできていたことを自覚する。
最初は無愛想でマイペースだと思っていたショウタくん。
でも実はちゃんと他人のことを見ていて、伝えるべきことははっきり言ってくれる。
自分をしっかり持っているところに、私は惹かれていた。
ショウタくんが就職して、一人立ちをする。
……血の繋がりすらない私とは、もう関わることはないのかもしれない。
現実味を帯びてじわじわと私の胸の中に広がる寂しさを、もて余していた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。